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二十二
パチパチ…。
線香花火の小さな音。
もう直ぐ落ちるんだろうか。
寂しいな。
ああ、でも、僕も、僕も…線香花火みたいに、はねてなくなってしまいたい。
「おい。」
光でも、一ノ瀬くんでもない声。頭を上げると、笹舟君がそこにいた。また、何か言われるのかな…。
「これ。」
「え?」
「線香花火。あっちは大きな花火の方が好きだから。」
「ありがとう。」
無言。
話が続かないのが苦痛で自然と眉が寄った。立ち去らないと言うことは何か言いたいのか?
それとも僕が何か話したほうがいいんだろうか…。
「さっき、篠崎に何かを言われていただろう。何を言われた。」
「…。」
下がりかかった頭が上がる。篠崎といえば、光の友人のカイ君のこと。
彼に言われたことをそう簡単に伝えられるはずがない。
「そうか。言いたくなければ言わなくていい。篠崎は光が好きなんだ。あいつはそれしかない。だから、周りが見えない。何を言われても気にしなくていい。」
気にしない。
そんなこと出来るはずがない。
明確な悪意と存在の拒絶。耐えられる筈がない。何より自分は、光を傷つけたのだという。
そうだ、簡単な話だ。自分は生きている価値がない。それだけだ。この目の前にいる男も光が好きだ。言ってやればいい。自分の醜い心の内を。
そしたらきっと、きっとまた…。
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