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二十四

友達? なんで。 僕と? なにそれ。なにそれ。 ははっ、なにそれ。 狭くて、苦しくて、独りぼっちで、悲しいくらい真っ暗な世界が、急に明るく開かれた気がした。 「ねぇ、笹舟君の知ってる僕を教えてよ。思い出したいんだ。今、僕は笹舟君と友達になれるか判断は出来ないけど。でも、思い出したらきっと今度はいい友達になれそうな気がするんだ。」 「ああ。」 なんだ、なんだ、なんだ。 「お前は不器用な奴だった。でも、俺はいつもお前に騙されていたな。光に迫ろうとしたら決まってお前が邪魔しに来た。嘘も何度もつかれた。」 「僕、性格悪っ…。」 「そうだな。でも、必死で光を守ろうとしていた。何よりも光を大切にして。ただ、己のことを粗末にし過ぎたんだろう。あの日、爆発した。」 「僕が光に酷いこと言ったっていう…。」 「ふっ、あれはただの兄弟喧嘩だろ。弟が兄に向かって暴言を吐くなんて珍しいことじゃない。ただ、少し言い過ぎただけだ。だから、記憶が戻ったら光に謝らないとな。」 なんだ、なんだ、なんだ…。 「おーい、夢〜!今から打ち上げ花火するって〜!一緒に見よー!」 なんだ、なんだ、なんだ。 僕を否定しない人だっているんだ。 友達になってくれる人だっているのか。 「夢、まだキツいだろ?連れて行くよ?」 駆け寄ってきた一ノ瀬君が手を差し伸ばしてくれる。ポトリと、涙が落ちると、だんだんと溢れるように流れ落ちていった。 「えっ、えっ、夢?なんで泣いてるの?」 「僕にも、大切に思ってくれる人はいるんだね。」 「…っ、うん。そうだよ。俺も、光も、夢の両親もみんな夢を大切に思ってるよ。だから、泣かないで。」 「うん、ありがとう。」 それでも尚、流れる涙は止まらず、花火が上がっても霞んで見えなかった。

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