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二十五
一ノ瀬優斗
ありがとうと告げた夢はこれまで見たことがないくらい綺麗で美しかった。
別荘から帰って数日。
あれから夢をいろんなところに連れて行った。俺が出掛けようと提案する時もあれば、夢からあそこに行きたいと告げてくることもある。
別荘に連れて行ったのが、とても良い気晴らしになったのかもしれない。
硬かった表情もどんどん柔らかくなっていき、今ではよく笑うようになった。
今日は夢のお願いで高校近くの町まで訪れた。
本格的に記憶を取り戻したいとのことだ。いつもより夢の様子に気をつけながら、町を回る。
「お願いがあるんだけど、いいかな?」
「お願い?俺が叶えられる願いならなんでもするよ。」
「手、繋いでいい?」
「何か調子悪いの?」
「ううん。ひ、人肌が恋しくなったみたいな感じ。」
よく分からない言い訳に笑いながら、自分の手を夢の手に絡ませた。夢は自分から言ったのに少しあたふたして、それでも嬉しそうに微笑んだ。
「ねぇ、あそこ行ってみよう。」
目の前にある店を指差して、夢は走り出す。腕を引っ張られ、そのまま俺も走り出した。
後ろからみた夢は少し顔を赤らめている。
照れているのか。
聞かなくてもそれはわかった。
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