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二十六
男性用のアクセサリーが目の前でズラリと並ぶ。
ここら辺は若者に人気のショップが多い。お洒落なカフェから小さなバッティングセンターまで。学生がふらりと訪れるには十分な町だ。
そして、この店は俺や光もよく足を運んでいる店。慣れた手つきでその扉を開いた。
一通り見て回った後、夢は恐る恐る俺の裾を引っ張った。
「一ノ瀬君、どうせならお揃いのもの買おうよ。その…、思い出に、さ。」
「いいよ。何にしようか。」
「えっと、ネックレスもいいし、ブレスレットもいいよね。アンクレットとかでもいいかも。」
ショーケースに並んだアクセサリーを見る。シンプルなものから奇抜いものまで。いろいろな種類がある。
その中で夢が足を止めたのは、シンプルなリングネックレスが飾られたショーケースの前だった。
「これにする?」
コクリと頷く夢。
無言のままそのネックレスを見つめている。
少し値段は張るけど、まぁいいか。
ネックレスを2つ取って店員に渡す。
「一ノ瀬君?お金…。」
「俺が買うよ。」
「でも、僕がお願いしたからっ。」
「じゃあ、快気祝いってことで。やっと杖なしで歩けるようになったんだから、このくらい買わせて。」
「ありがとう…。」
お揃いのネックレス。
まるで恋人同士だ。
チャリンと揺れるネックレスを眺めて、なんだか無性に嬉しくなった。
「他に行きたいところない?」
そう聞くと夢は学校と呟いた。
一瞬何を言ったか理解出来なかった。
夢にとって嫌な記憶が詰まった学校に…。そんなの無理に決まっている。
確かに夢の精神状態は安定している。だからと言って、夢にとって悪夢のような場所に連れてはいくのは話は別だろう。
と、思ったのに…
夢の目は既に決心がついたように写っていた。
ああ、もう、弱い夢ではいてはくれないのか。俺はたぶん、分かっていた。知らないふりをしていたけれど、分かっていた。
夢はいつだってどんな時だって強くそこにあったのだから。
俺も決心した。もしも夢が記憶を戻して、苦しむようだったら支えよう。夢が涙を流すなら、そっと抱きしめよう。
そう、決めた。
のだが…。
一通りの学校案内、夢の部屋も見せた。
夢の部屋は定期的に掃除をしている。特に光が積極的に。
もしも夢が自分の部屋を見たときに汚かったら可哀想だから。
そう言って、掃除をしていた。
「部屋、綺麗だね。」
「光に言ったら喜ぶよ。」
「うん。後で伝えるよ。」
結局のところ、夢が取り乱すことはなく、至って平然としたまま穏やかに回ることが出来た。
それが良いことなのかは分からない。ただ俺は心の底からホッと息を漏らした。
最後に夢は桜並木の下に行こうと言った。この時期に桜は咲いていない。それでも行きたいと言った夢に俺は頷いた。
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