27 / 43

二十六

男性用のアクセサリーが目の前でズラリと並ぶ。 ここら辺は若者に人気のショップが多い。お洒落なカフェから小さなバッティングセンターまで。学生がふらりと訪れるには十分な町だ。 そして、この店は俺や光もよく足を運んでいる店。慣れた手つきでその扉を開いた。 一通り見て回った後、夢は恐る恐る俺の裾を引っ張った。 「一ノ瀬君、どうせならお揃いのもの買おうよ。その…、思い出に、さ。」 「いいよ。何にしようか。」 「えっと、ネックレスもいいし、ブレスレットもいいよね。アンクレットとかでもいいかも。」 ショーケースに並んだアクセサリーを見る。シンプルなものから奇抜いものまで。いろいろな種類がある。 その中で夢が足を止めたのは、シンプルなリングネックレスが飾られたショーケースの前だった。 「これにする?」 コクリと頷く夢。 無言のままそのネックレスを見つめている。 少し値段は張るけど、まぁいいか。 ネックレスを2つ取って店員に渡す。 「一ノ瀬君?お金…。」 「俺が買うよ。」 「でも、僕がお願いしたからっ。」 「じゃあ、快気祝いってことで。やっと杖なしで歩けるようになったんだから、このくらい買わせて。」 「ありがとう…。」 お揃いのネックレス。 まるで恋人同士だ。 チャリンと揺れるネックレスを眺めて、なんだか無性に嬉しくなった。 「他に行きたいところない?」 そう聞くと夢は学校と呟いた。 一瞬何を言ったか理解出来なかった。 夢にとって嫌な記憶が詰まった学校に…。そんなの無理に決まっている。 確かに夢の精神状態は安定している。だからと言って、夢にとって悪夢のような場所に連れてはいくのは話は別だろう。 と、思ったのに… 夢の目は既に決心がついたように写っていた。 ああ、もう、弱い夢ではいてはくれないのか。俺はたぶん、分かっていた。知らないふりをしていたけれど、分かっていた。 夢はいつだってどんな時だって強くそこにあったのだから。 俺も決心した。もしも夢が記憶を戻して、苦しむようだったら支えよう。夢が涙を流すなら、そっと抱きしめよう。 そう、決めた。 のだが…。 一通りの学校案内、夢の部屋も見せた。 夢の部屋は定期的に掃除をしている。特に光が積極的に。 もしも夢が自分の部屋を見たときに汚かったら可哀想だから。 そう言って、掃除をしていた。 「部屋、綺麗だね。」 「光に言ったら喜ぶよ。」 「うん。後で伝えるよ。」 結局のところ、夢が取り乱すことはなく、至って平然としたまま穏やかに回ることが出来た。 それが良いことなのかは分からない。ただ俺は心の底からホッと息を漏らした。 最後に夢は桜並木の下に行こうと言った。この時期に桜は咲いていない。それでも行きたいと言った夢に俺は頷いた。

ともだちにシェアしよう!