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三十

飛行機の到着口。 そのすぐ側で待っていると光から連絡が来た。今日は光といち君、それとしゅーと君が来てるという。 両親は仕事の都合で来れなかったが、早めに帰ってくるとのことだ。 到着口を出て、すぐ。 笑顔で手を振る光を見つけた。僕も手を振り返す。すると、光は走って僕の方に飛び込んできた。思いっきり抱きしめ合って見つめ直す。 2年の時。 はじめて別れ別れに過ごした。 その月日を経験してたくさんの事を学んだ。 自分がどれほど光に頼り切って生きてきたのかも同時に。 「お帰り、夢。」 「ただいま、光。」 変わらない。 変わっていない。 その姿に目尻が熱くなった。 それは光も同じようだ。 薄らと涙が浮かんでいる。 「元気だった?」 「元気だったよ。」 お互いにお互いの存在を確かめ合った。 「あの…そろそろいいかな?」 「あっ、久しぶり。いちくん。」 おずおずと言ったようにいちくんが話しかけてきた。久々に会ったいちくんは前よりもさらに大人っぽくなってすごく格好良かった。 「久しぶり、夢。元気そうで良かった。それで、隣にいる彼は知り合い?」 「ハロー。僕はユメのクラスメイトのユーリ。よろしくね。」 相変わらずのコミュ力の高さで物怖じもせず挨拶を交わした。日本語を話せないと思っていたのか、2人とも驚いた顔を一瞬した。 「ええっと、僕は夢の双子の兄の光。日本語上手いね。」 「祖母が日本人だからね。それに日本のアニメは大好きだから勉強沢山したよ。でも、君がユメの言っていたお兄さんか。ユメの言った通り似てない。ユメの方が数倍可愛い。」 ピシリと空気が凍てついた。 そもそも光の方が花があると言われることが多い。わざわざ口に出さない人もいるけれど、それは当たり前だった。 それを、ユーリは僕の方が可愛いと言った。それも初対面で。 「ああ、別に君が可愛くないわけではないよ。ただ、ユメは独特の可愛さなのかな。愛でる度に懐いてくる感じ。無闇に触ると怪我をするけど、手順通りに触って撫でると懐いてくる。ね?可愛いでしょ。」 ああ、違う。 僕をペットと勘違いしているだけだ。 「ユーリ、僕はペットじゃないよ。」 「僕はユメをペットなんて考えたことはないよ?」 さっきの発言は完全にペット扱いじゃないか。 「ユメは可愛いからね。」 チュッと頬にキスされた。いつものこと。これもまた日本人より距離感の近いこの男の悪い癖だ。ここは日本だからと叱ろうとしたとき、僕の腕は急に引っ張られた。 「ふぇ?いちくん?」 「ここは日本だから、あまりキスやハグはやめた方がいいと思うよ。」 「へぇ…。大丈夫。僕はユメにしかしないよ。」 謎に火柱が散った気がした。いちくんは光が貶されたみたいだったから怒っちゃったのかな。相変わらず、変わらないな。 「それより、しゅーと君はどうしたの?」 先程から姿を現さない彼を探す。友人として、たまに、本当にたまに、連絡が来る。その多くは光の相談だったけど。それでも、しゅーと君とはいい仲を築けていると思う。 「修斗の車で今日は迎えに来たから、修斗は今駐車場。ユーリ?はどうするの?」 「僕は今日のところはホテルに泊まるよ。明日からユメとデートしようと思ってるけど。」 「えっ、明日は無理だよ。明後日付き合ってあげるから、明日は一人で観光して?」 「えーっ、一人で観光は寂しいなぁ。あっそうだ、イチ?だっけ。観光、付き合ってよ。」 なんてことを言い出すんだ。 図々しいにも程がある! ユーリは2年前からの付き合いだけど、その図太さは出会った当初から発揮されていた。 日本人ということで少しだけ差別され、遠目に見られていた僕に初めて言った言葉がこれだ。 「日本人?へー、僕の婆ちゃんも日本人だよ。にしても、みんななんでそんな遠目で見てるの?今時人種差別なんて流行らないよ。」 その誰にでもズバズバ言ってしまう感じが好ましいところであり、たまに空気の読まない図太さは悪いところだ。 だから当然、ユーリにはふざけた事を言うなと告げるつもりでいた。 でも、いちくんの答えは…。 「いいよ。僕はずっと日本にいたからね、ある程度なら案内できる。どうせなら明後日も付き合うよ。」 「ふーん、なるほどね。」 「待って、待って。ユーリ冗談言わないで。いちくんに迷惑かけるんだったら放っとくよ。いちくんも、ユーリの冗談は無視して‼︎」 「ジョークじゃないよ、ユメ。それに、了承は取れたんだからいいでしょ。よろしくね、イチ。」

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