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三十五
「わー!すごぉい!赤い鳥居!これが日本の門だね!」
ついて早々喜び出したユーリに、僕もいちくんも何も言わない。ただ、白い目で見ていたのは間違いない。
「ここ確かアニメの聖地になってたところだよ。」
「えっ?聖地ってメイド喫茶だけじゃないの?」
「そのよく分からない情報はどこから得たの…。」
鳥居を抜けると長い階段がある。広々としたその敷地は観光客にも人気だと雑誌には書いてあった。
「ユメも来たことないの?」
「うん。家から遠いし…。地元でもあんまり行かないよね。」
「ふーん…。あっ、あそこにお饅頭ある!食べよう!日本の甘味ってやつだよね。」
「ユーリ。食べるのは後だよ。普通はお参りして、神様にご挨拶してから頂くの。」
えーっと文句を言うユーリを引っ張って、さらに上に上がる。後ろからクスクスと笑い声が聞こえた。
「ん?いちくんどうしたの?」
「いや、ユメがお母さんみたいだったから。」
「えっ、そんな…。」
「ユメ、明るくなったね。2年前と全然違う。」
「…うん。そうだね。」
あちらで過ごした日々は僕自身を変えてくれた。いや、元に戻してくれた。
自分ってなんだろう。
光と夢の違いってなに?
そんなこと考える余裕もないくらい目まぐるしく回る日々。
言語も含めた文化の違いが僕を追い込み、そして突き放した。2年の間に、誰かを真似たユメが、ただのユメへと変えたのだ。
「変かな。こんな僕。」
「変じゃないよ。変じゃない。俺は今の夢も好きだよ。」
ああ、彼はまたなんて残酷なことを言うんだ。好きだなんてズルいだろう。それも、今も昔も好きだみたいなそんな言い方は卑怯だ。
「ユーメー、早くお祈りしよー。」
「はいはい。いちくん、行こっか。」
「うん。」
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