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三十六
「うわぁ、すごーい!古ーい。日本だぁ。」
ユーリはこれまでかというほどはしゃいでいる。そんなに喜んでくれるんだったら連れてきたかいがあったものだ。
「ユーリ。ほら、お参りしよう。」
「うん。」
3人揃って手を合わせる。ああ、この感じも懐かしいな。
「ねぇ、高台がある。あそこ行ってみようよ!」
ユーリの提案で高台に登る。
お世辞にも綺麗とは言い難い場所だった。
でも、高台から覗く風景は町全体を見渡せる絶景だった。
「すごい、夜になったらもっと綺麗に見れるかも。」
「そうだね。まさかこんな整備もされてなさそうなところから絶景が見れるなんてね。」
「あた、あたたた。」
突然響いた声。この絶景の場であまりにも不釣り合いな声に驚く。ばっと振り向くと、ユーリがお腹を抱え、中腰になっていた。
「ユメ、急にお腹が痛くなってきた。」
「えっ、ユーリ?」
「僕、先に下に降りてるね。あっ、恥ずかしいから付いてきたらダメだよ。」
ユーリは中腰のまま階段を降りる。
「えっ、ちょっ、ユーリ?」
「ユメ、僕はユメが好きだけど、同じくらいユメの幸せを願っているんだ。だからね、ユメ。ちゃんと話すんだよ?」
ユーリは僕にそれだけ言って元来た道へ帰っていった。改めていちくんを見る。2人きりになったのはあの桜並木の下で話をしたあの日以来だ。
「ユーリ行っちゃったね。気を使わせたかもしれない。」
「そうだね。…ねぇ、ユメ。ユーリの気遣いに甘えて少し話をしようか。」
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