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第3話(※) 〜side.寛希〜

管理会社の係員の救助でようやく外へ出られた俺たち。 総務課にも連絡が入っていたらしく、皆で俺たちの無事を喜んでくれた。 係員や総務課の人と話している間も、俺は千早(ちはや)の手を離さなかった。 ようやくまた俺の元に戻ってきてくれた千早をもう二度と離したくなかったし、照れて頬を染める千早が可愛くてたまらなかった。 夜遅くなったし、明日も仕事だけど千早を帰すつもりはなかった。 今夜は一緒に過ごしたいと思った。 会社の前でタクシーをつかまえて、2人で乗り越んだ。 家の住所を告げると、繋いだ千早の手がピクリと反応した。 いいだろ?と目配せをすると、恥ずかしそうにうなずいた。 気さくな運転手のおじさんと世間話をしながら、千早の手の甲を撫でて、指を絡めた。 千早を恥ずかしがらせたかったし、セックスの前戯のつもりで性的な触れ方をしたら、千早はモジモジしながら窓の外ばかり見ていた。 手を繋いでコーポの2階にある俺の部屋へ。 「寛希(ひろき)、この部屋…///」 気づいた千早が泣きそうになる。 付き合っていた時とほとんど変わらない俺の部屋。 ペアのマグカップも、初めてのデートで撮った初々しい2人の写真もフォトフレームに飾ったままにしてあった。 千早のスウェットや下着、タオルもクローゼットに入ったままだ。 「お前の物は全部そのままだ。お前がいつでも帰って来れるように…」 そう言いながら抱き寄せると、千早の涙腺が崩壊した。 「風呂沸かしてくるから待ってろ」 冷え切った千早の背中を撫でた。 カゼを引かせる訳にはいかないから、早く風呂に入れてやらないと。 スーツの上着を脱ぎながらバスルームへ向かうと、千早も後ろをついてきた。 屈んで風呂掃除をしていると、千早が背中にくっついてきた。 シャツ越しに伝わる千早の温もり。 1秒でも早く掃除を終えて抱きしめようと思っていると、千早がシャツの裾から手を差し入れてきた。 「寛希…好き…」 最初は遠慮がちに腹筋のあたりに触れるだけだった。 甘えてくる千早が可愛くて、やりたいようにさせると、少しずつ大胆になっていく。 俺の胸板や腹筋を好き放題撫で回しながら、だんだん興奮して息が乱れてくる千早。 ハァハァしながら体を撫で回すなんて、どれだけ俺が好きなんだよ…と思うけど、逆の立場だったらもっとあんな事やこんな事をしてるだろう。 撫で回すだけじゃ済まないぞ。 千早が俺を求めている現実が嬉しかった。 3年前、千早が別れ話をしてきた時、唐突だったし、筋が通ってるんだか通ってないんだか…妙に中途半端で納得のいく感じではなかった。 何か事情があると思って、しつこく追い回したけど、ああ見えて千早は頑固だ。 きっと俺はもう過去の男。 そんな俺には、全く向き合おうとしなかった。 千早に『嫌い』『二度と連絡しないで』と言われた後、徹底的に無視されるのは精神的にキツかった。 でも、どうしても諦めたくなかったから、千早が会ってくれるまで粘るつもりだった。 そんな生活が約1か月。 ある日ふと気づいた。 もし、本当に俺を嫌いになったのなら、付きまとわれたら気味悪いだろう。 もし、まだ俺に気持ちがあって、何かの事情で別れ話をしてきたなら、何度も千早に無視させたらかわいそうだ。 そう思って、自分から連絡する事はあきらめた。 俺はチャンスを待つ事にした。 今年の人事異動の発表で、千早が本社に戻ってくる事を知った。 何とか話をしようと、タイミングを見計らっていた。 そんな矢先に、偶然エレベーターに閉じ込められた。 上手い事話が進んで、また恋人同士に戻る事ができた。 「お前、飢えすぎ」 風呂の栓をしたのを確認すると、その場に座って千早を膝に乗せた。 「だ、だって…///」 俺だって触りたい…と、真っ赤になる千早。 「可愛いな、千早は」 少しクセ毛の前髪をかき分けておでこにキスをする。 千早の真似をしてシャツの裾から手を入れて胸をまさぐった。 「あっ…んんっ…」 「乳首硬くなってるぞ」 さっきからずっとだろ…?と意地悪を言いながら人差し指の先でカリカリと両方の突起を引っ掻くと、触って欲しそうにさらにぷっくりしてきた。 「あぁん、寛希…///」 千早を抱きしめながらネクタイをほどいて、シャツのボタンを外した。 露わになったほっそりした首筋に唇を寄せて、ついばみながら右手を千早の下半身へ。 硬くなった中心を撫で回すと、スラックスの上からでもわかるくらいにしっとりしていた。 「こんなにすぐトロトロになるのに、3年もどうしてたんだよ」 俺がつぶやくと、千早の体が強張った。 「1人でしてたのか?それとも誰かに可愛がってもらってたのか…」 過去の事を俺がどうこう言う筋合いがないのはわかってる。 でもずっと不安だった。 もしかしたら今、千早は誰かに抱かれてるかも知れない。 もしかしたら今、恋人のいない千早が体を持て余して、淋しさを堪えながら自分で慰めてるかも知れない。 ふとした瞬間にそんな妄想を繰り広げては落ち込んだ。 きっとセックスをするであろう、クリスマスや誕生日が忌々しくて仕方なかった。 「や…言いたくない」 眉間にシワを寄せた千早がプイとそっぽを向いた。 否定も肯定もしなかったけど、その両方なんだと思った。 わかってたけど、ショックだった。 そうだよな…、千早は甘えん坊で可愛いし、優しいし、顔も体も最高だ。 誰も放っておく訳がない。 今フリーだったのが奇跡だ。 でも、これからの千早を抱くのは俺だけだ。 誰よりも千早を大切にして、千早の全部を満たしてやるんだ…そう思った。

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