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田中フルハウス 2話

「田中店長飛んだんですよね?…部長がここに来た理由…他にあるんじゃないですか?」 照哉は腕を組み部長を見る。 「まーな。照哉にハッカーしてもらおうと思って」 部長は汗を拭きながら言う。 「どこにハッキングするんですか?」 「高速のカメラの画像」 「もしかしなくても、店長探してるんですか?」 「そうだ。アイツ、店の金を持ち逃げしたんだ」 「あー…」  何故、店長が飛んだのか東雲達は分かったようで同時に声を上げた。 「店長、死亡フラグgetですね」 幸太が頷きながら言う。 「照哉さんなら24時間以内に見つけられますからね」 健太も頷く。 「照哉さんなら…半日だよ」 東雲が言う。 「じゃあ、照哉頼んだぞ。東雲は明日詳しい話するから」 と部長は東雲の不満の雄叫びを無視して去って行った。 「店長…飛ぶなら飛ぶで金持ち逃げなんて…自殺行為ですよね」 幸太が東雲と照哉に同意を求めるように二人を交互に見る。 「まーな。パソコンも直ったし、ハッキングでもしますか~」 照哉は凝った肩をほぐすかのように腕をグルグル回しながらパソコンのある部屋へと向かう。 「俺達も見ていて良いですか?」 幸太と健太が後を追う。 「お前らはダメ!俺の休憩の時間だからカウンターに居ろ」 東雲は同時に二人の襟首を掴む。 「え~~、ハッキング見たいですう!」 「俺は休憩行きたいですう~」 ダダをこねる二人を無理矢理カウンターに残し、東雲も奥の部屋へと行った。 「東雲、お前さ店長飛んだ事知ってたろ?」 奥の部屋に入るなり照哉はそう言いながら直ったばかりのパソコンをいじりだす。 「はい。」 誤魔化す事もせずに即答する東雲に照哉は笑う。 「 俺がその事、部長や上の人達に告げ口したらどーすんの?」 「だって、照哉さんはしないでしょ?」 相変わらずの即答。 言わないで下さい。と頼むのではなく、アナタは告げ口する人じゃない。と東雲の目がそういっている。 「まーね、告げ口するなら店長飛んだ時点で言うしね。それに俺は告げ口は嫌いだしな!」 照哉はニヤリと笑う。 「ところで金持ち逃げも知ってた?」 「それは予想外です。逃げる時に偶然見かけただけだから」 「ふ~ん。まあ、店長も色々プレッシャーとかあったみたいだし、あの人はこの業界じゃ生きていけない人だから逃げて良かったんじゃない?」 「でも、もう直ぐ見つかる事になるから…止めておけば良かったかな?」 照哉に依頼が来たって事はもう見つかったも同然。カメラはどこにでもある。 高速道路やコンビニ、歩道。交通機関はもちろん銀行やレストラン。 余程カメラを意識して逃げない限り無理。 逃げる者には余裕がない。よってカメラに気付かない。 「東雲には悪いけど、やるだけはヤルよ。」 「はい。」 東雲は頷く。 「暁かあ。」 「はい?」 急に話が変わり東雲は首を傾げる。 「お前の名前だよ。逆だよな。暁、東雲、曙だよな?」 ようやく照哉が言いたい事が分かり東雲は笑う。 夜が明けて朝になるまでの言い方。 東雲の名前は生まれた時間帯から名付けられていた。 「生まれたのが丁度、暁だったみたいで」 「しゃれてんなあ~」 照哉がそう言った時にドアが開き、 「相撲取りの話ですか?」 と老人が部屋に入って来た。 白髪頭で痩せた老人は手にバケツを持っている。 「ヒデちゃん、そのバケツなに?」 照哉が老人に声をかける。 「あ、バケツです」 老人の答えに二人は、うん、見て分かるよ…と声に出さずに頷いた。

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