11 / 135
鬼畜ですが何か? 2話
「照哉、なんだお前が相手か。」
会長は普通の顔に戻ったのでホッとした。
ホッとはしたが…キスマーク?
キスマークって?
いや、その前に照哉なら良いとか言う会長に、
「あの、俺と照哉さんは」
訳が分からないが会長が東雲と照哉が付き合っていると思っているようだ。
「女の子に手を出してないなら良い。別にボーイ同士の恋愛は禁止していないしな」
会長は東雲の頬を軽くペチンと叩いた。
いやいやいや、恋愛していないし!
東雲は否定しようとするが、
「会長、昨日の結果報告です」
と照哉が飛んだ店長の報告を持ってきており、会長は照哉と一緒に歩き出す。
「東雲、助かったな」
真後ろから部長の声。
振り返ると汗を拭きながら一部始終を見ていたと思われる部長が立っている。
「今日さ、店長会議だってさっき会長が言い出してな、慌ててお前に電話しようとしたら会長に電話取られてさ」
店長会議?
一瞬キョトンとなったが、昨日…店長にされた事を思い出した。
「みんな集まっているんですか?」
「いや、会議は13時から」
「はあ?」
携帯の時計の表示は10時。
なんで?何で自分はあと10分で来いと言われたんだろう?
なんで、殴られた上に土下座まで…
いーやーだー!
これから先の事を考えたら絶対に寿命が縮む!
理不尽な事で殴られる事が多くなるだろう。
逃げたい…。逃げ出したい!
「それより東雲は照哉と出来てたのかあ」
と部長がニヤニヤしながら聞いてくる。
「できてません!」
不機嫌そうに返事を返す。
「またまたあ、このキスマーク照哉がつけたって言ってたじゃないか」
部長の視線は東雲の首筋にある。
キスマーク…?
さっきからキスマークって…。
東雲はトイレへと駆け込んだ。
トイレに設置されてある鏡を覗き込んで、
「なんじゃこりゃーっ!」
と叫んだ。
会長に裂かれたシャツの合間から見えるキスマーク。
首筋だけじゃない。
ボタンを開け、見てみると首筋、鎖骨、胸元まで点々と赤い印がある。
いつの間に?
夕べの事を思い出そうとするがユナにマッコリを飲ませられた後の記憶がなかった。
何も思い出せないが朝起きた状況を思い出してみる。
起きた時に照哉が右側に幸太が左側に寝ていて、自分は下着一枚で毛布にくるまっていた。
で、ユナとモモと健太と英雄氏が寝ていた。
でも、キスマークをつけられた記憶がやはり無い。
ブブブッ、
携帯のバイブが鳴る。
モモからのメールだ。
開くと、東雲、夕べは萌をありがとう。
と何か付属されており、それを見ると…
自分と照哉の写真。
しかも照哉が上で東雲の首筋にキスをしている。
キスマークがあるヶ所。
照哉が言った事は本当だったようだ。
東雲はモモに電話を掛けると、彼女がモシモシを言う前に、
「モモ、お前俺に何をしたーっ」
と叫んだ。
「やだなあ、ヤッたのは照哉さんだよお。」
のモモの声に、ヤッたって何?と頭が真っ白になる。
「ヤッた?」
「うん。東雲も感じてたよお。照哉さんにやられてる間中、色っぽい声だしててさあ。もうハアハアしたよ。これで新作書けるよありがとう」
とモモは勝手に電話を切った。
ヤッた?
ヤッたってヤッた?
モモの言葉がリピートする。
うそ…マジで?
東雲はその場に座り込んで頭を抱えた。
******
「モモ、ソノ言イ方ダト、東雲ト照哉ガ、セックスシタト聞コエルゾ」
モモの隣で寝ていたユナは目を覚ましており、話を聞いていたようだ。
「わざとだよ。東雲に照哉さん意識させるんだあ」
目をキラキラとさせるモモはスケッチブックを手に昨日見た東雲と照哉の構図を思いだしながらイラストを描いてゆく。
******
「東雲、具合悪いのか?」
座り込む東雲に声をかけてきたのは照哉。
ヤッた…。
モモの言葉が頭でグルグルと回る。
「部屋暑かったから気にしなかったけど、お前裸だったもんな。風邪ひいたか?」
照哉はしゃがみ込み東雲の額を触る。
その瞬間。キスマークの事を思いだし、思わず後ろにのけぞり、その反動で尻餅をつく。
「どうした東雲、つーか顔赤いぞ、やっぱ熱ある」
照哉は東雲の腕を掴み立たせようとする。
「や、大丈夫」
腕を振り払おうとするが余計にふらつき照哉に抱き止められる。
ともだちにシェアしよう!