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鬼畜ですが、何か? 3話
「トイレで盛るな」
会長の声に東雲と照哉は振り向く。
サカるなと言われる意味はもちろん、抱き合う二人。
経緯を見ずに今の現状だけ見れば誤解もするだろう。
「違います!」
慌てて離れる東雲。
「東雲、熱があるみたいです」
照哉の言葉に会長は東雲に近づき、手を額にあてる。
「これくらい何ともないよな」
低い声の会長に東雲は頷く。
「じゃあ、会議までに時間あるから付き合え」
「はい?」
「照哉、彼女借りるぞ」
会長はニヤリと笑うと東雲の腕を掴み歩き出す。
東雲は会長の車に押し込められた。
「あの…どこ行くんですか?」
自分の横に座る会長に恐る恐る聞いてみる。
「色々回るぞ」
いや、答えになってないです会長…と言いたいが言うと殺されるかも知れないとそれ以上何も聞かずにいようと東雲は思った。
10分程度走ると車は止まった。
車から降りると目の前には美容室。
しかも高そうな。
会長に腕を引っ張られ店内に入る。
「会長、お待ちしておりました」
店長らしき男性が出迎えてくれた。
「コイツを任せる」
と会長は東雲を男性の前に突き出す。
「はい。ではお任せ下さい」
男性は東雲を奥へと連れて行くとイスに座らせた。
ここまでくると何をされるかは理解出来る。
東雲のそばに男性が二人ついた。
二人が美容師で、これから髪を切られると予想はつく…。
でも、何で?
何故に会長は自分を美容室に?
小さい疑問が芽生える。
「その野暮ったい髪をなんとかしたかったんだよ。店長になるんだったらそれなりの格好をしてもらう」
目の前の鏡に会長が映っている。
東雲が髪を切られるのを後ろから見ている会長は満足そうな顔だ。
野暮ったいって失礼な!
文句を言いたいが怖くて言えず東雲は始終黙っていた。
髪を切られ、カラーリングに入る頃には東雲はウトウトしていた。
カラーリングの色を聞かなかった事に後悔したのはシャンプーをして髪をドライヤーで乾かされた後。
すでに出来上がった後に鏡に映った自分を見て声を失った。
ギンイロ…
鏡に映った自分の髪の色は銀色をしている。
銀色ーっ!
鏡を何度見ても髪の色は銀色をしている。
「顔立ち綺麗だから似合いますよ。」
「せっかくイケメンなんだからこれくらい派手にいかないと」
二人の美容師の褒め言葉に胸くそ悪いぜ!と心で罵倒をした。
「ありがとう。じゃあ、次行くぞ」
会長は時計を見ながら東雲の腕を掴み歩き出す。
「ありがとうございました。」
美容師の声を後ろに聞きながら、あれ?料金は?と東雲は料金を支払っていない事に気付いた。
車に押し込まれた後に、
「会長、料金は?」
と聞いてみる。
「あの店の経営者は俺だ。」
あ…なる程…と納得をしたが、自分が支払いをしなくて良いのだろうか?と考える。
「俺が支払いを…」
「着いたぞ、こい!」
支払いしなくて良いんですか?と聞く暇もなく東雲は車から降ろされ、店に連れ込まれる。
「コイツに似合うスーツ一式よろしく、あと…頼んでたヤツもな」
会長を出迎えた男性に東雲は引き渡され、奥の部屋へ連れて行かれた。
スーツ一式と会長が言った通りに身体のサイズを測られ、何着もスーツを試着させられた。
会長がよし!と言ったもののみ次々に箱に詰められていく。
やばい…
俺、金ないのにぃ!
東雲の頭は試着したスーツの値段がいくらするのかでいっぱいだった。
ネクタイにシャツ、スーツ上下に靴下や靴、鞄や小物にいたるまで会長が選んでいく。
待ったをかけたい…。
逃げたい!
東雲は逃げ出すチャンスをうかがうがドアの前に会長を守るSPが立っており、逃げる事は不可能。
借金背負わせられるんだあぁーっ!
頭が真っ白になり、会長がぼやけ…、真っ暗になった。
◆◆◆◆◆◆
「よお東雲」
目を開けると何故か照哉が居て、東雲を見下ろしている。
「あれ?照哉さん何で?」
会長に連れ回されていた時には照哉は居なかったのに。
「会長がお前抱きかかえて帰って来たんだよ」
「はい?」
どうして?何でそうなる?と東雲は考えても分かるわけがない。
「熱出してぶっ倒れたんだよ」
照哉の言葉に血の気が引く。
死亡フラグ決定!
「それにしても東雲、すげえ派手になったなあ」
照哉は東雲の額に冷えピタを貼る。
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