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鬼畜ですけど、何か? 6話
「東雲はインフルだ。俺は予防接種してるから良いけど、照哉んとこの店の女の子もボーイも予防接種させてなかっただろ?だから、東雲隔離したのにお前らは…」
会長はため息をつく。
「え?俺、インフルエンザなんですか?」
東雲は知らなかったようで驚きの声を上げる。
「あああ、東雲さん大丈夫ですかーっ」
幸太は不安げな顔で照哉を押しのけ、そこでまた固まる。
「あああーっ、東雲さんが派手なイケメンになってるうぅ」
銀色に染められた髪は短くなっており、前髪とメガネで隠れていた大きな瞳は歓喜の声を上げる幸太を見つめている。
「うるせぇガキだな。俺に挨拶もなしに玄関に入るとは良い度胸だな、オイ…」
会長は幸太の襟首を掴むと壁側に彼の体を押しつけた。
片手で簡単に幸太の胸ぐらを掴み、上へとあげる。
足は地面を探しバタバタしている。
「す、すみません会長!お疲れ様です」
怯えながら幸太は挨拶をした。
「俺は疲れてないんだが…」
低い声で幸太を威嚇する会長。
「会長、泣きそうだからやめてあげて下さいよ。」
照哉が冷静に止めに入る。
「ち、これくらいで」
会長が手を放すと幸太はその場にドサリッと尻餅をつく。
「東雲は寝てろ」
会長はその場に立ちつくす東雲の腕を引っ張る。
「照哉さんと幸太にインフルエンザうつったかも」
「金髪にはうつってねえだろ、照哉はわかんないけどな」
会長はニヤニヤしながら照哉をみた。
「予防接種してますから大丈夫です。金髪はしてませんけどね」
照哉は幸太を立たせながら言う。
「お前は帰れ」
「え、でも…俺…」
照哉に帰るように言われるが東雲が心配でたまらない幸太は動こうとはしない。
「会長に殺されるぞ。店は部長行かせるから、東雲は休みだって皆に伝えておけよ」
「東雲さん…食われませんよね?」
インフルエンザも心配な幸太だが、一番の心配はそこだった。
「俺が見張ってるから。それに会長怒らせたらお前クビだぞ、そしたら東雲と一緒には居られない」
「そんな…」
照哉のいう事は一理ある。幸太は仕方なくと寮へと帰って行った。
「東雲はベッドへ行け」
会長から促され、東雲はベッドへと戻る。
寮に戻るつもりだったが、インフルエンザなら仕方ないと諦める。
幸太に感染してないと良いなあ。と考えた。
「着替え必要無かったな、インフルエンザじゃ一週間は隔離しないとダメだし。」
照哉は持ってきた袋をベッドの脇に置く。
「店長初日に寝込むとは東雲らしいっちゃらしいな」
照哉はクスクスと笑う。
「なんですか?らしいって?」
東雲はちょっとムッとしながら聞き返す。
「お前、ボーイの初日に自転車に跳ねられて血だらけで出勤したじゃん?ビックリしたもんな俺ら。で、そん時も会長がたまたま店来てて、血だらけの東雲見て、病院へ連れて行ったら、腕骨折もしてました…ってオチ」
「1年も前の話じゃないですか!」
東雲は恥ずかしそうに顔を赤らめる。
1年前、初日に寝坊をし、猛ダッシュで駅まで走っていた途中で自転車にぶつかり転倒した。
焦っていたので怪我していた事に気付かず、バイト初日に遅刻したくなくてギリギリで店に駆け込んだ。
その時、会長が「社会人は10分前行動だろーが!」と東雲を怒鳴りつけたが、直ぐに「お前、平気か?」と目を見開いて東雲の顔を覗き込んできた。
「事故にでも遭った?」
初対面の照哉との会話はその言葉だった。
「はい?来る途中で自転車にぶつかりました…よく、分かりましたね?」
東雲本人は気付いていなかったのだ、どうして会長が驚いて、照哉が事故に遭ったと分かったのかを。
「よく分かりましたね、…って、お前天然君なん?血だらけだよ」
血だらけ?
その言葉で額あたりが熱くて、汗みたいな何かが流れている感触を感じ、手で拭ってみた。
赤い?
指についたものは赤く…
あれ?血?
それでようやく自分が怪我していると気付いたのだ。
血を見た瞬間に意識が飛んだ。
で、目を開けると病院に居て、会長と照哉が病院に連れて来たと聞いた。
そして意外と大怪我だった事も照哉に聞いて驚いたのだ。
「大怪我なのに遅刻したくなくて店まで来た東雲をさ、会長は期待の新人って褒めてた」
「ちょ、やめて下さいよ!まあ、拾ってくれたのは会長だし、ガッカリされたくなかったし」
東雲は過去話にまだ顔を赤くした。
「前から知り合いだったのか?」
「あ、そんな意味じゃなくて、雇ってくれたって意味です」
東雲は慌てて言い直す。
「東雲なら俺でも雇うぞ?とりあえず寝てろよ、俺もしばらくここに居るから」
照哉はそう言うとシーツをかけ直す。
幸太に見張っててと頼まれたのもあるけど、なんかほっとけない。これが照哉の本音。
東雲が休む部屋を出ると会長が居るリビングへと向かう。
「なんだ、早いな」
照哉の姿を見て会長はニヤリと笑う。
早いなの意味が何かはピンときた照哉は、
「熱ある奴を抱くほどドSではありませんから」
と答えた。
「俺は構わずやるけどな、ドSだから」
会長はまたニヤリと笑う。
「会長、東雲に手を出してないでしょうね?」
「人のモノ取るのは得意だが、…安心しろ、まだ手は出してない」
会長はそう言いながら座っていたソファーから立ち上がった。
まだ手は出していない?
これから出す…とも取れる言い方に照哉は少し不安になった。
「出掛けるから東雲の面倒見てやれよ」
会長は上着を手にすると歩き出す。
そして照哉の横をすれ違い様に、
「寝ぼけた東雲はヤバいぞ。」
と耳打ちをして部屋を出て行った。
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「え~東雲さん暫く戻って来ないの?」
幸太に説明を受けた健太はつまらなそうに言う。
「東雲と会長と照哉さんの3Pかあ~凄くエロいんだろうなあ」
モモの脳内腐変換はすでに暴走しているようでウットリとした表情をしている。
「さ、さささ、3P」
幸太は青ざめる。
「なんが3パックあるとですか?しのめさん来んとなら、店はどがんするとですか?」
英雄氏が珍しく店の心配をしている。
「部長が来るって」
「えーっ!いやだー」
幸太の答えに全員が嫌そうな顔をした。
「あたし生理だから休む」
とモモ。
「え?生理まだだろ?」
幸太は驚くように聞き返す。
「幸太変態~女子の生理チェックしてるう」
モモはからかうように言う。
「今更だろ!部長が嫌なだけなクセに」
「ち、バレたか」
「部長ハ、私モ嫌イダ。キモイ…」
とユナは真顔で答えた。
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