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眠れる子羊ちゃんとベッドの上の狼くん 4話
「し、失礼すます!」
緊張気味に幸太は挨拶をする。
夕べ、会長に凄まれた幸太は玄関で既に固まっていた。
「失礼すますって日本語か金髪よ?あっ?」
会長が幸太に迫ってくる。
ガクブル…いま、自分の置かれている立場を文字で表すなら、ガクブル…。
「すみません、会長がイケメン過ぎて幸太、緊張してるんですよ」
ユウヤが助け舟を出す。
「相変わらずビビりだなあ、お前」
会長は鼻で笑うとリビングへと入って行った。
「ありがとうございます」
幸太はホッとした顔でお礼を言う。
「早く上がれよ。」
「い、いいんですか?」
「会長が帰れと言ってないんだから良いんじゃない?」
ユウヤの言葉に恐る恐ると玄関で靴を脱ぎ、部屋へと上がる。
広いよなあ~。
夕べもチラリと見て、そう感じた。
会長って独身の1人暮らしなのに部屋は3部屋もあるし、キッチンもカウンターだし、めっちゃオシャレじゃないか?
キョロキョロと周りを見る幸太に、
「なんか田舎から出てきたオノボリさんみたいだな」
とユウヤは笑う。
「だ、だって広いし…金持ちだなあって」
「今更?ブラックカード所有する人なのに」
「そうですよね。俺なんてまだクレジットカード自体持ってないです」
「マジで?なんか見た目と反するよなあ」
ユウヤは可愛いと言って幸太の頭を撫でる。
こ…子供扱いかよ?なんてムッとくるけれど、頭撫で撫では嫌いじゃない!
東雲さんにされたい!
そんな妄想をしながら東雲が寝ている部屋へと来た。
「幸太、お前インフルエンザ感染すんぞ…それにユウヤまで居るし」
部屋の入り口に立つ2人に照哉は少し驚いたようだ。
「照哉、久しぶり~。俺は予防接種してるよ。幸太は東雲のインフルエンザなら感染しても良いんじゃない?」
ユウヤは幸太の背中を押して前に出す。
「東雲さんは?」
心配そうにベッドの側に来た幸太は東雲の様子を伺う。
「薬効いて寝てる」
「熱下がったんですか?」
「まだだな。あまり辛そうなら座薬…」
「ざ、座薬はダメです!」
照哉の発言に幸太は叫ぶ。
「インフルエンザって座薬使えなかったっけ?」
座薬のくだりを知らないユウヤはそう言う。
「幸太、モモに影響され過ぎだから。」
照哉はペチんと幸太の額を叩く。
その後、幸太はじっと東雲の寝顔を見つめている。
もうぅ、穴が開くくらい。
「幸太、よだれ」
「はう!」
照哉に注意され、幸太はよだれを拭く。
ユウヤはいつの間にか会長の部屋へと消えていた。
「はあぁ…」
ため息をつきながら幸太はウットリとまだ東雲を見つめている。
「そんなに東雲好きか?」
「はい!」
即答する幸太に照哉は苦笑いする。
つい夕べ、東雲を危うく抱きそうになった。抱いてしまってたら幸太は俺を恨むだろうか?
そう考えてしまう。
ガタンッ、ガタガタッと激しい物音が聞こえて来た。
「は…激しそう」
物音の正体を2人は直ぐに分かったらしく顔を見合わせて苦笑いする。
「あんっ、あーっ」
激しい物音と一緒に聞こえてくるユウヤの悩ましい声。
「どんなんかな?」
幸太は興味ありありな顔で照哉に話しかける。
「覗いてきたら良いじゃん」
「えっ?ダメですよ、殺されます」
照哉の提案に幸太は首を振る。
「参考になるんじゃねーか?」
「さ、参考?」
「東雲は男経験ないんだからリードしなきゃなんないだろ?」
「りりり、リード?」
幸太は耳から首まで真っ赤にしながら叫ぶ。
照哉の言う通り、ノンケの東雲と万が一、そうなった場合…やはり、リードするのは幸太になる。
「き、キスもまだなのに」
幸太はかなりテンパっている。
「なあ、幸太って男の経験あり?」
ふいに聞かれ、
「て、照哉さんは経験あるんですか?」
更にテンパりながら答える。
「質問を質問で返すなよ…俺はあるよ」
「あるんですか!」
照哉の告白に幸太は目を見開く。
「あるよ、で?お前は?」
「あ…いえ、その…」
幸太はしどろもどろになる。
「だったら、勉強してこいよ」
照哉はニヤリと笑う。
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