19 / 135

眠れる子羊ちゃんとベッドの上の狼くん 4話

「し、失礼すます!」 緊張気味に幸太は挨拶をする。 夕べ、会長に凄まれた幸太は玄関で既に固まっていた。 「失礼すますって日本語か金髪よ?あっ?」 会長が幸太に迫ってくる。 ガクブル…いま、自分の置かれている立場を文字で表すなら、ガクブル…。 「すみません、会長がイケメン過ぎて幸太、緊張してるんですよ」 ユウヤが助け舟を出す。 「相変わらずビビりだなあ、お前」 会長は鼻で笑うとリビングへと入って行った。 「ありがとうございます」 幸太はホッとした顔でお礼を言う。 「早く上がれよ。」 「い、いいんですか?」 「会長が帰れと言ってないんだから良いんじゃない?」 ユウヤの言葉に恐る恐ると玄関で靴を脱ぎ、部屋へと上がる。 広いよなあ~。 夕べもチラリと見て、そう感じた。 会長って独身の1人暮らしなのに部屋は3部屋もあるし、キッチンもカウンターだし、めっちゃオシャレじゃないか? キョロキョロと周りを見る幸太に、 「なんか田舎から出てきたオノボリさんみたいだな」 とユウヤは笑う。 「だ、だって広いし…金持ちだなあって」 「今更?ブラックカード所有する人なのに」 「そうですよね。俺なんてまだクレジットカード自体持ってないです」 「マジで?なんか見た目と反するよなあ」 ユウヤは可愛いと言って幸太の頭を撫でる。 こ…子供扱いかよ?なんてムッとくるけれど、頭撫で撫では嫌いじゃない! 東雲さんにされたい! そんな妄想をしながら東雲が寝ている部屋へと来た。 「幸太、お前インフルエンザ感染すんぞ…それにユウヤまで居るし」 部屋の入り口に立つ2人に照哉は少し驚いたようだ。 「照哉、久しぶり~。俺は予防接種してるよ。幸太は東雲のインフルエンザなら感染しても良いんじゃない?」 ユウヤは幸太の背中を押して前に出す。 「東雲さんは?」 心配そうにベッドの側に来た幸太は東雲の様子を伺う。 「薬効いて寝てる」 「熱下がったんですか?」 「まだだな。あまり辛そうなら座薬…」 「ざ、座薬はダメです!」 照哉の発言に幸太は叫ぶ。 「インフルエンザって座薬使えなかったっけ?」 座薬のくだりを知らないユウヤはそう言う。 「幸太、モモに影響され過ぎだから。」 照哉はペチんと幸太の額を叩く。 その後、幸太はじっと東雲の寝顔を見つめている。 もうぅ、穴が開くくらい。 「幸太、よだれ」 「はう!」 照哉に注意され、幸太はよだれを拭く。 ユウヤはいつの間にか会長の部屋へと消えていた。 「はあぁ…」 ため息をつきながら幸太はウットリとまだ東雲を見つめている。 「そんなに東雲好きか?」 「はい!」 即答する幸太に照哉は苦笑いする。 つい夕べ、東雲を危うく抱きそうになった。抱いてしまってたら幸太は俺を恨むだろうか?  そう考えてしまう。 ガタンッ、ガタガタッと激しい物音が聞こえて来た。 「は…激しそう」  物音の正体を2人は直ぐに分かったらしく顔を見合わせて苦笑いする。  「あんっ、あーっ」  激しい物音と一緒に聞こえてくるユウヤの悩ましい声。 「どんなんかな?」  幸太は興味ありありな顔で照哉に話しかける。  「覗いてきたら良いじゃん」  「えっ?ダメですよ、殺されます」  照哉の提案に幸太は首を振る。  「参考になるんじゃねーか?」  「さ、参考?」  「東雲は男経験ないんだからリードしなきゃなんないだろ?」  「りりり、リード?」  幸太は耳から首まで真っ赤にしながら叫ぶ。  照哉の言う通り、ノンケの東雲と万が一、そうなった場合…やはり、リードするのは幸太になる。 「き、キスもまだなのに」  幸太はかなりテンパっている。  「なあ、幸太って男の経験あり?」  ふいに聞かれ、  「て、照哉さんは経験あるんですか?」  更にテンパりながら答える。  「質問を質問で返すなよ…俺はあるよ」  「あるんですか!」  照哉の告白に幸太は目を見開く。  「あるよ、で?お前は?」  「あ…いえ、その…」 幸太はしどろもどろになる。  「だったら、勉強してこいよ」  照哉はニヤリと笑う。

ともだちにシェアしよう!