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ヤキモチ、ナニソレ?美味しいの?
「幸太、健太ちょっと良いか」
フロアを掃除している二人にユウヤが声をかけてきた。
「はい?」
二人同時に返事を返す。
「新人だ」
ユウヤはそう言いながらドアの向こうで待たせていた若い男性を店内へ呼び寄せた。
短髪で茶髪の可愛い顔をした男性が二人の前に立つ。
「あれ?新人って今日からですか?」
と健太が不思議そうに聞く。
新人が入るのは知っていたが、今日だとは聞いていない。
「東雲が休んでるだろ?新人でも居ないよりマシだろうって会長が」
「ああ、」
幸太が返事を返す。
確かに居ないよりはマシだ。
「シンジです。宜しくお願いします」
そう言うと彼は深々と頭を下げた。
「よろしく~」
二人は極上スマイルで返事を返した。
「双子なんですね。」
シンジと名乗った男性は人懐っこい笑顔で話掛けてくる。
「俺が幸太で弟だ」
「で、俺が健太で兄だよ」
「金髪が幸太で茶髪が健太で覚えると良いよ」
双子の挨拶に付け加えるようにユウヤがアドバイスする。
「はい。よろしくお願いします。」
シンジはもう一度頭を下げる。
同じ二十歳だと聞いていたシンジは幼く見えて、そして人懐っこい。
双子は彼に良い印象を持った。
「早速仕事を教えてくれよ」
「はい。じゃあ、とりあえずロッカーの場所教えてあげるね」
健太がシンジを手招きする。
「はい。ありがとうございます」
健太の後ろをシンジはついて行く。
「あの…東雲さんは?」
シンジと健太が見えなくなると、待ち構えたように幸太は口にする。
「もうちょっとしたら寮に戻れるんじゃねーの?」
「そうですか」
幸太はホッとしたような、少し不満そうな顔をする。
「何か言いたそうだな」
「照哉さんズルい」
子供みたいに拗ねた幸太はそう言葉にする。
「本当、わかりやすいよな幸太は」
ユウヤは笑う。
幸太にとって、東雲を看病出来る照哉の存在はヤキモチ以上の嫉妬心があり笑い事ではない。
「照哉さん…好きなのかなあ」
言葉にしてしまったら一層焦ってしまいそうになる。
「そりゃあ好きだから付き合ってんだろ?」
「だから、付き合ってないですよ」
幸太は強く否定した。
鼻息も荒く否定する幸太の頭に手を置いたユウヤは、
「頑張れよ」
そう言って頭を撫でた。
優しく微笑まれ、幸太は顔を赤くして「はい」と小さく返事をした。
「あっ、そうだ、あの新人も寮使うから部屋余ってただろ?」
ユウヤは思い出したように聞く。
「部屋ですか?荷物部屋になってしまってる部屋なら」
「しまった、寮を先にするべきだったな」
確かに幸太が言うように物置と化していた部屋を思い出してユウヤは頭を抱える。
「すぐに入る予定なんですか?だったら、俺らと爺で片付けますけど」
仕事外の事なのに嫌な顔一つせずに答える幸太。
「悪いな…新人入ったら寮はまた田中が増えるな」
ユウヤはクスクスと笑う。
「ですね、フルハウス揃いそうですね」
幸太も笑う。
****
「シンジ君ってボーイ初めて?」
健太とシンジはロッカーへとやってきた。
「シンジで良いです。はい。ボーイは初めてです。前はコンビニとかだったし」
「えっ?コンビニ居たんだ?俺も夜勤とかやってた事あるよ。」
思わぬ共通点に健太は目をキラキラさせた。
「本当ですか?夜勤ってキツい割にはお金あんまり稼げないですよね。だから、金が良いこっちに」
「あ~、分かる!俺もだし」
同意する健太をジッと見つめて急に黙ったシンジを心配そうに「どうしたの?」と聞く健太。
「いえ…なんか、凄く不安だったんで…もしかして怖い先輩とか居たらどうしようとか。でも、健太さん優しい感じで良かったなあって」
シンジはそう言うと子供みたいに笑った。
「大丈夫だよ。ここはスタッフみんな優しいし」
「安心しました」
シンジは再度、よろしくお願いします。と頭を下げた。
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