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ヤキモチ、ナニソレ?美味しいの? 2話
「スタッフがまだ居るんだ、紹介するね」
健太はシンジを連れて事務所へと行く。
「英雄さん、ちょっと良い?」
ドアを開けて中に居た英雄氏を呼び寄せる。
「なんでしょか?」
英雄氏はニコニコと笑いながら二人の前立つ。
「新人のシンジ君だよ。この人はスタッフの英雄さん」
健太は英雄氏とシンジの二人に交互に紹介をする。
「しんしんしんじ?変わった名前ばしとっとですね。」
英雄氏の素っ頓狂な言葉に健太は頭を抱え、シンジは笑いをこらえる。
「違う、新人!新しいボーイのシンジ君!」
健太はどう説明しようか一瞬悩んだ。
「あ~そがんいえば、新人入るって言いよんしゃったもんですね」
英雄氏は思い出したようで健太はホッとした。
「よろしくお願いします」
シンジは英雄氏にも深々と頭を下げた。
「ウホッ!」
その瞬間、英雄氏は小さい雄叫びを上げる。
ウホッって…エネ〇リ君かよ、と健太は頭に某ガソリンスタンドのCMに出てくるゴリラの着ぐるみを思い出していた。
「何がウホッなんですか?」
聞きたくなかったが一応聞いてみる。
「嬉しかです。後輩が出来たとです」
英雄氏が一番下っ端だった為に毎回、幸太にパシらされてたので、かなり嬉しい模様だ。
「そだね、英雄さんトイレ掃除とか教えてあげてよ」
「はいです!」
教えてあげて…その言葉に英雄氏は喜びを感じ、返事に力が入っていた。
「仕事教えるですよ新人君。トイレへ行くです」
張り切るように英雄氏は先頭をきって歩く、その後ろをシンジがついて行く。
「大丈夫かなあ?」
健太が口にした大丈夫は、英雄氏がキチンと仕事を教えてあげられるかと云う事だ。
*****
「さあ、掃除の仕方ば教えるです」
「はい。よろしくお願いします先輩」
シンジは元気に返事を返す。
英雄氏は目を見開いてシンジを見ているので何か変な事を言ったのかと彼は不安になる。
「あの?何か変な事言いました?」
「いや、良か事ば言いましたばい。先輩ってもう一回言ってみてくれんですか?」
英雄氏にとって先輩と言われたのは夢のような事だった。
「先輩」
シンジの言葉に英雄氏は気持ち悪いくらいにニヤニヤしている。
「早速、先輩が指導するですよ」
先輩という言葉にご満悦な英雄氏は張り切って掃除道具を出す。
「あの、先輩…いいですか?」
シンジは遠慮がちに手を上げる。
「どがんしたですか?」
「緊張し過ぎてお腹が…トイレ良いですか?」
シンジはお腹を押さえて苦しそうだ。
「腹痛かとね?そいはいかんばい、トイレすると良かですよ」
「でも、早く掃除しないとダメですよね?」
「掃除はしよくですけん、早う」
英雄氏はシンジを個室へと押しやる。
「すみません先輩」
ドアの向こうからシンジの申し訳なさそうな声。
先輩…
英雄氏はニヤリと笑い張り切って掃除を始める。
掃除を行う音が聞こえてくると、シンジは便座のフタを閉め、上に座りポケットから携帯を出す。
携帯にはメールを受信した事を知らせるランプが点滅している。
開くと友人から。
初出勤どうよ?
シンジが今日から新しいバイトを始めると知っている友人が様子を伺いにメールをくれたようだ。
シンジは、 鼻で笑うと、チョロいぜ。と返信した。
確かに簡単に騙せた。
ニコニコしてハキハキした返信を返せば愛想が良いと殆どの人間がそう受け取るのだ。
現にさっき会った同じ顔をした二人も、ホスト崩れしたチャラいユウヤという男もシンジを好青年だと思っている。
そして、仕事をさぼる為に腹が痛いと嘘ついたのに、心配をしたジイサン。
本当、チョロいぜ。
携帯のランプがまた点滅をする。
時給いくらだっけ?
そんな内容。
シンジは聞いた時給を書いて返信をする。
すぐに返信がきた。
『やっぱ、風俗って高いんだな。』
『高いから入ったんだよ』
『なあ、従業員なら安くヤレんの?』
『何をだよ?』
『エッチだよ』
『バカ、本番やんねーし』
『そうなのか?じゃあ、抜いてくれんのか?』
『さあ?でも、店慣れた頃に安くで入れてやるよ』
そんな内容をやり取りしているとドアがノックされ、
「大丈夫とですか?」
と心配する英雄氏の声が聞こえてきた。
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