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ヤキモチ、ナニソレ?美味しいの? 3話
「あ、すみません先輩。まだ痛いです」
シンジは白々しく嘘を言う。
「誰か呼んで来るです」
英雄氏は心配でそう言ったが、シンジには余計なお世話でしかない。
「大丈夫です、初日からこんな風にお腹痛くなった事を他の人に知られたら、クビになるかも知れないんで」
「…そうかも知れんです。ここの人はしのめさんと照哉さん以外は冷たかですもん…良かです。黙っとくですよ」
英雄氏はそう言うとトイレ掃除を丁寧に終わらせた。
******
喉が乾く…水、飲みたいかも。
東雲はベッドの中で何度も寝返りをうつ。
水が飲みたくて仕方ないのだけど、起き上がるのが面倒くさい。
「ほら、水」
声と共に頬に冷たいグラスがあたる。
ビクンとなって目を開けるとグラスを持った照哉の姿。
「起き上がれるか?」
照哉は心配そうに東雲の顔を覗き込む。
何で…照哉さんが水を持ってるんだろう?
確かに水を物凄く飲みたい。東雲は起き上がり、水を受け取る。
「ありがとうございます」
「水、水言うからさお前」
照哉は水を飲む東雲の隣に座る。
あ、声に出してたのか…と東雲は思った。
「具合どうだ?」
照哉に聞かれ、大丈夫ですと東雲が答えると、照哉の顔が近づいた。
えっ?
一瞬、体が硬直した瞬間に照哉の額が自分の額にくっついて、照哉の体温が伝わる。
「ちぇ、完璧下がってやんの」
額をくっつけたまま照哉は呟く。
「ててて、照哉さん」
東雲は慌てて照哉から離れる。
間近で見る照哉は相変わらず綺麗で、伏せた目蓋は睫毛が長かった。
「何今更照れてんだよ、ずっと一緒に寝てただろ?」
照哉は笑う。
「抱っこしてえ、とか…1人は嫌だとかさ、めっちゃ可愛かったぞ」
ぐはっ!なんだソレ!
そんな事…
きっと言った。
俺の悪い癖…。
熱があったり寝ぼけたらそんな事を言うらしい。
「忘れて下さい!」
東雲は顔を真っ赤にして言う。
「やだね!可愛かったんだからいいじゃん」
「忘れて下さいよ!」
必死に頼む東雲に照哉は、
「チュウしてくれたらな」
と言った。
本気なのだろうかこの人は?
「チュウとかしませんから!」
「じゃあ、ずっと言うぞ」
やっぱり本気なのだろうか?冗談に取れない自分が居る。
だって、モモに送りつけられた写メでは明らかに照哉とキスをしていた。
「忘れて下さい、チュウはしませんけど…」
「マジつまんねえ、熱下がった途端にいつもの東雲だし、もっといっぱい抱っこしたりしときゃ良かったな」
照哉はふてくされた顔をする。
抱っこ…。
抱っこされていた自分を想像すると熱が上がったんじゃないかと思うくらいに顔が熱くなる。
「俺以外に抱っこされないって約束までしたのにさ」
照哉の言葉になんじゃそりゃあーっと叫びたくなる。
なんだか弱みを握られたみたいで照哉を的もに見れないので俯く。
その瞬間に下から照哉の顔が近付き軽くキスをされた。
「隙あり!」
照哉はいたずらっ子みたいにニヤリと笑う。
東雲は咄嗟の事に硬直してしまった。
「んな、可愛い顔するなよバカ!襲いたくなるから」
真っ赤な顔をして目を真ん丸にして照哉を凝視する東雲。
キス一つでこんなにうろたえたのを見ると案外と東雲は経験が浅いのかも知れないと照哉は嬉しくなる。
やはり誰も手をつけていないのは嬉しい。
「チュウくらいした事あるだろ?」
「そりゃあ、ありますけど、お、男とチュウは無いですから」
うろたえた東雲は照哉から離れようとする。
もちろん逃がす照哉ではない。
「チュウしたから、もう言わないでやるよ」
そう言いながら東雲の腕を掴む。
「マジで勘弁して下さい」
顔を真っ赤にしている東雲を見られただけで照哉は満足だった。
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