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純情な感情 5話

「遅い!」 寮の前で幸太は腕組みをして英雄氏を出迎えた。 「はう!やっぱり金髪が怒っとるとです」 英雄氏はシンジの後ろに隠れる。 「あ、シンジ君、ジジイと一緒だったんだ?寮の部屋空けてるから荷物運びなよ」 「えっ?空けてるって?」 シンジが聞き返すと、 「悪い、物置みたいに使ってたんだ。あ、でも掃除してるから綺麗だよ」 だから雑巾? 英雄氏が雑巾を買いに来てたのはその為だったのかと今更思う。 「す、すみません!俺の使う部屋なのに!」 シンジは慌てて幸太に深々と頭を下げる。 「いいよ、だって今日から仲間だろ?」 幸太は微笑む。 「そうですばい!シンジ君はもう仲間とです」 シンジの後ろから英雄氏が言う。 「じいは早く雑巾持って健太のトコ行けよ」 幸太は寮の方角を指さす。 「金髪はいばりんぼですばい」 シンジにしか聞こえないくらいの小さい声で呟くと逃げるように足早に中へと入って行った。 シンジは笑いを堪える。 今日から仲間だろ? 頭で幸太の言葉がリピートされる。 仲間? 仲間…、 仲間なんてくそくらえ! シンジは心の中で吐き捨て、気付かれないように笑顔を作ると、 「俺も掃除します」 と中へと入って行った。 シンジの部屋は角部屋だった。 ドアの外に色んな荷物が置かれていた。 物置にしてた…って言ってた通りに電化製品から雑誌、壊れたソファやら机やら、…よく入ったなあ…とシンジは荷物の数々を見て思った。 「オッス、おかえりシンジ」 部屋へ入るとモモとユナが挨拶をする。 シンジは思わず後ずさる。 「シンジ君、おかえり」 健太が微笑む。 おかえり… なんて返すんだっけ? シンジにはあまり聞き慣れない言葉。 「ど、どうもすみません」 シンジは頭をペコリと下げた。 「掃除、もうちょっとで終わるよ」 と健太。 「お、俺も手伝いますから」 シンジは慌てて靴を脱ぎ、部屋へ上がった。 「もう、終わるよ。それより、荷物は?」 「いえ…俺、荷物は…」 シンジの荷物はロッカーに入っている鞄一つだった。 「俺、ちょっと粗大ごみをどうしたら良いか聞いてくるね」 幸太は部屋を出た。 店の備品もあるので部長に使うかを確認しなきゃな…なんて考えながら歩いていると、誰かにぶつかった。 寮でぶつかる相手なんて知れている。 もちろんユウヤだった。 「す、すみません」 幸太はみるみる顔を赤らめる。 だって、さっきキスされたばっかり。 意識しないわけがない。 「片付けは?」 「あ、だ、だいたい」 幸太はかなり挙動不信でその様子にユウヤはクスクスと笑う。 「なんかテンパってるね幸太?」 幸太はユウヤと顔を合わせる事が出来ずに俯いたり、そっぽを向いたり。 落ち着きがない。 そんな幸太の顔に視線を合わせるように覗き込むユウヤ。 「あっ、」 目が合うとさらに真っ赤になり、目をそらす。 「幸太、可愛い。もしかして意識しちゃった?」 ユウヤの手は幸太の頭を撫でる。 ああああ、思い出しちゃうじゃん! 幸太は首をブンブン振る。 そんな彼をユウヤはギュッと抱きしめた。 「わああああーっ!ゆ、ゆゆゆ、ユウヤさん」 幸太は抱きしめられ、更にテンパる。 「幸太、抱きごこち良いね」 「あの、あの、ユウヤさん困ります」 「何が?」 「俺、東雲さんが好きなんです」 「うん、知ってる」 「だから、」 「だから?」 ユウヤは幸太から離れ、彼の顔を見つめる。 「だから、その…」 思わず目を伏せる幸太の唇にまたユウヤの唇が重なった。 「んっ、」 逃げようとする幸太を壁に押し付け、ユウヤは舌を侵入させた。 「んんっ、」 抵抗しようとする両手はユウヤの手により壁に押し付けられ、逃げられない。 くちゅっ、と絡んでくる舌はまるで別の生き物みたいだ。 しばらく、深いキスが続き、ようやく唇が離された。 「ユウヤさん、お、俺、東雲さんが」 「諦めなよ東雲は」 ユウヤはそう言いながら幸太の耳たぶを舐める。 「ひゃう、」 思わず変な声が出る。 「ね、東雲は諦めて俺にしなよ」 耳元で囁かれる。 「な、だって…ユウヤさんは会長の…」 会長の恋人なのに? そう言う前にまたキスをされた。

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