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会いたい 3話

ため息が出る。 携帯を何度も手にするがポケットに戻す東雲。 照哉さん、何してんのかな?  メールとかしても良いかな? 照哉さんからメール来たらいいのに。 ため息をついて、1日が終わっていく。  ******* くそじじい! 照哉はもう一週間も寮と店に出ていない。 会長が部屋に居ない時はドアの前に見張りが居るし、携帯は没収。パソコンも会長が居る時じゃないと触れない。 くそーっ!  照哉はイライラしていた。 東雲に一週間も会えていない。 泣いていたと聞いたのに。 東雲……、 会いたい。 ******** 「よお、ユウヤ」 受付に居るユウヤに声をかけて来たのは会長。 「お疲れ様です」 ペコッと軽く頭を下げるユウヤ。 「東雲は?」 「東雲なら事務所です」 「あ、そ」 会長は奥へ進んでいく。 「会長、照哉は何時まで休むんですか?」 背中に声をかける。 「お前が居れば店は人は足りるだろ?」 足を止め、会長は振り返った。 「店は大丈夫ですけど………」 ユウヤは言葉をためる。 「店は?何がダメなんだ?」 分かっているくせにワザと聞く会長。 「それは………」 「ユウヤさんっ!」 ユウヤの言葉を遮るように幸太が叫びながら走って来た。 「幸太、どうした?」 「東雲さんが、倒れて」 真っ青な顔の幸太。 「本当か?」 ユウヤが返事を返すよりも早く会長が走り出した。 事務所のドアを勢いよく開けた会長は、床に倒れている東雲を見つけた。 「会長さん、しのめさんが」 慌てる英雄氏を押しのけると会長は東雲を抱き上げた。 「救急車……」 後から来た幸太の呟きを無視し、東雲を抱いた会長はそのまま駐車場へ。 「会長、どこいくんですか!」 ユウヤも後ろをついて来た。 「救急車呼ぶより車の方が早い」 会長は東雲を後部座席に寝かせる。 「俺もいきます」 ユウヤは返事も聞かずに車に乗り込む。 ******* 診察が終わり、東雲が眠る部屋に通されたユウヤ。 会長は医者と話して来ると先程別れたばかり。 点滴の管を見つめ、視線を東雲に移す。 「照哉のばか野郎」 ユウヤはさっきまでずっと照哉に電話をしていた。 でも、繋がらない。 メッセージを入れておいたけど、連絡はまだ無い。 東雲の額を触ると熱い。 医者に聞かなくても理由は分かる。 きっと照哉のせい。 ずっと元気が無かった東雲。  倒れる前にもっと気をつけておくべきだった。 ユウヤは東雲の頭を撫でる。 ******** 「随分可愛い子だな、結構俺好み」 白衣を着た医師は会長を見ながらニヤニヤしている。 「てめえの趣味は聞いてない。どうなんだ?」 「2~3日安静にしてれば身体は元気になるよ」 「身体は?」 もったいぶるような言葉回しに会長は舌打ちする。  「あの子、何も食べてないよ。胃の中空っぽ。水もあまり飲んでないから脱水症状もある。お前、あの子に何かしたか?ストレスもあるみたいだしな」 チッ、食ってねえのか、あのバカ! 「連れて帰れるか?」 「ダメって言っても連れて帰るんだろ?つーか、飯くらい食わせてセックスしろよ」 と医者はニヤつく。 「食わせてから食うさ」 「鬼畜だなお前。」 「ここに置いて帰ったらお前に食われる」 「まあな、」 ニコッと微笑む医者に背を向け、会長は病室に戻った。 「ユウヤ、お前もういいぞ帰れ」 「えっ?でも、……東雲は?まさか入院とか?」 「点滴終わったら俺の部屋に連れて帰る」 「会長の?……」 東雲を抱く気かとユウヤは思った。 「お前、エロい事考えてるだろ?弱ったコイツを抱くとか?」 ニヤと笑う会長に、ユウヤは黙って彼を見た。  そうじゃないの?そう聞きたかった。 「コイツが倒れた原因のヤツが俺の部屋居るだろ?」 「ああ、」 そうだ、照哉は会長のマンションに居る。 ユウヤはホッとした。 「じゃあ、帰ります」 「待てユウヤ」 帰ろうとするのを呼び止められ、振り返る。 「タクシー代」 と会長はユウヤに金を渡す。

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