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子羊ちゃんの逆襲 7話
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「ユウヤくん久しぶり」
運転席から灯の声がし、
「あ、久しぶりです」
とユウヤは軽く頭を下げる。
「暢気に挨拶してんじゃねー」
会長はユウヤの胸ぐらを掴む。
「会長っ」
いきなり現れ、車に押し込まれて、胸ぐら掴まれている今の状態をユウヤは理解できない。
「お前、俺のマンションを女にバラしたか?」
「えっ?」
ユウヤはきょとん。
「今日、来たんだよクソオンナが…あの場所知ってんのはお前と灯、照哉と東雲、それと金髪」
金髪は幸太の事。
「俺、言ってない、言ってないです」
ユウヤは首を勢い良く振る。
「本当か?」
涙目になりながらユウヤは何度も頷く。
「分かった」
会長はユウヤから手を離す。
「信じてくれるんですか?」
「お前、俺に嘘つく度胸ねえからな」
会長はユウヤの頭に手を置いた。
「お前じゃねえなら金髪か?」
「こ、幸太はそんな子じゃ」
「あのマンションを教えるなと金髪には言ってねえ~からな……灯、車止めろ」
灯が車停めると会長は降りていく、何?と不思議そうにその行動を見るユウヤ。
しばらくすると、 自転車でこちらに向かう幸太の姿。
「幸太!」
ユウヤも慌てて車から降りた。
幸太は待ちかまえた会長に掴まれ自転車から下ろされた。
いきなりの会長に掴まれた幸太は驚いて声が出ない。
「よう、金髪、聞きたい事があんだけどよ、」
胸ぐらを掴み引き寄せたままに低い声で聞く。
「お前、あのマンションの場所を女にバラしたか?」
「えっ?」
迫力な会長に返せた言葉はそれだけ。
「えっ?じゃねーだろ!教えたか教えてないかハッキリしろ」
「しらな……しらない」
幸太は首を振る。
「嘘ついてないだろうな?嘘ついてたらユウヤの前で犯すぞ」
ド迫力な会長に幸太は涙目。
「会長止めてください」
ユウヤが慌てて止めに入る。
「会長~」
モモの声がし、車が近くで止まった。
「何だ、モモユナか」
「幸太どーするの?3P?」
目をキラキラして聞くモモに凍り付いた空気はクラッシュした。
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会長から事情を聞いたモモユナは、
「女じゃないけど男が来たよ」
とモモ。
「男……軽そうな男か?」
「うん。客として私を指名してきたんだけど、聞くのは会長の事ばっかだったからさ、男が帰る時に英ちゃんに後付けさせたのよ、ね、英ちゃん」
とモモは後部座席を見る。
「そげんですばい」
窓をあけ、顔を出す英雄じい。
「男はアルマゲドンっちゅう店に入っていきましたばい」
得意げに話す英雄じい。
「アルマゲドンってホストクラブ?まあ、ホストって風俗利用するもんな」
とユウヤ。
「で、モモは俺の話を」
「しないよ~」
会長の問い掛けにモモは答える。
「そうか」
「あっ!」
モモ達の話を聞いていた幸太が思い出したように声を上げた。
「少し前から寮近くの公園で散歩してる妊婦さんを毎日みてたんです。あまり気にも止めてなかったんですが、いつだったかホスト風の男と話しているのを見ました」
幸太の話に、
「ユウヤ、お前つけられてたな」
会長はユウヤを睨む。
ユウヤはもちろん気付いていないし、悪気はない。
「俺……すか?やっぱり」
ユウヤはショックを受ける。
「まあ、いい。お前の口から場所を伝えたんじゃねえからな」
会長はユウヤを残し、車に戻る。
「会長、あの、」
車に走り寄るユウヤに、
「マンションは引っ越した。だから気にするな」
そう言って、灯に車を出すように言い、その場を走り去った。
「ユウヤさん」
ユウヤの側に駆け寄る幸太。
「幸太、追いかけてきたんだ?」
ユウヤは幸太に笑いかけた。
「はい。だって、心配で」
「ありがとう」
ユウヤは幸太に頭をコツンと寄せて礼を言う。
「ユウヤさん、あの、ちょっと、モモ達が………」
その言葉に顔をあげると、モモユナ、英雄じいがじい~と2人を見ていた。
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