105 / 135

子羊ちゃんの逆襲 9話

辛い事を聞いて良いのだろうか?でも、好きな人の辛さとか痛みとか分かち合いたいと照哉は思う。 どこまで理解出来るかは分からないけど、話を聞く事は出来る。 「暁……親父さんの事聞いていい?」 照哉に言われ東雲は頷く。 「暁って料理美味いだろ、親父さんの影響?」 「うん……父さんに教えて貰った。若い時にフランスとか行ったって」 「えっ?じゃあ暁ってフランス料理とか作れるの?」 「作れるよ。でも、俺はこじんまりした居酒屋で出してた料理の方が好き」 確かに東雲が作る料理は家庭料理ばかりだ。 「凄いな暁は。」 照哉は東雲の頭をわしゃわしゃ撫でた。  「照哉さんが食べたいなら作るよ」 「ありがとう。んじゃ、デザートは暁だな」 その言葉に東雲は照哉を恥ずかしそうに見つめて、  「照哉さんとずっと一緒に居たい」 と言った。  「俺ね、お金貯めて店出すのが夢なんだ…父さんがやってたみたいな店」 だからここで働いていると東雲は続けた。  大学は行くのを辞めた。 これ以上祖父にお金を出させたくなかったから。 高校出して貰っただけで十分だった。  父親が死んだ時に多額の保険が降りたらしいが、東雲はあまり使いたくなくて、高校の時も小遣いはバイトで稼いだ。  高校を卒業して田舎を出て就職した小さい会社は2年も絶たずに倒産してしまい、慌ててバイトでも良いからと受けたのが今居る風俗のボーイだった。  ここを受けて良かったと東雲は思う。  照哉に会えたから。  「照哉さん好き」 東雲は照哉に抱きつくと照哉に自分からキスをする。  照哉なら大胆にもなれる。 直ぐに照哉に組み敷かれ、愛撫される。 照哉に好きを繰り返し、東雲は彼に抱かれる。  ***** ドアの向こうから聞こえる喘ぎ声に会長はドアの向こうでほくそ笑む。  全くガキ同士が盛りやがって! 会長はもう1つの寝室へ行くとパソコンを開く。 見るのは二人のセックスしている姿。  照哉はカメラの存在に気付いているが東雲は全く気付いていない。  照哉の下で愛撫を受け声を上げている。 その姿が昔抱いた男とだぶる。 あんな風に自分に抱かれた男。 「由貴」 彼の名前を呟く。  彼の名前を呼んだら、  「薫」 と返ってきた。 東雲は由貴の血を引く。 それだけで羨ましいと思ってしまう。 そして、壊してやりたいとも思う。  照哉に愛される東雲。  照哉に愛撫され、 東雲は両脚を自ら広げている。  もの欲しそうな顔。  照哉に挿入され、いっそう激しく声を上げている。  照哉の綺麗な背中が揺れ始め、広げられた両脚がピクピクと動き、 両手は照哉を求めるようにさ迷う。  音量を上げると、  「あんっ、あっ、照哉さっ……奥まで」 おねだりが上手くなっている。  ギシギシとベッドのきしむ音に混ざり照哉の甘い声が聞こえてきた。  「照哉め、俺の仕込みのおかげなんだぜ?東雲を満足させれるのは」 画面を見ながらニヤつく会長。  「ガキの頃に随分仕込んだからな」 そう言いながら会長はパソコンの画面を変える。 映し出される二人の男性。  二人とも照哉を抱いた男。  1人は照哉が言った通り死んでいた。  この男は確かに沖縄に居た時に下っ端で使っていた記憶がある。  刺されて死んでいた。  抗争に巻き込まれたようだ。  「これで死んでなきゃ、俺が殺してるよ」 会長はそう呟く。 もう1人の男。  写真は30くらいで、優男。  元中学教師。  所在を探ろうとしたが、この男も照哉が居なくなったと言った時期に死んでいる。  自殺。  どいつもこいつも、俺が先に見つけて殺してやったのに。  会長は舌打ちするとパソコンを閉じた。

ともだちにシェアしよう!