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火照りが収まらない体に、冷たいシャワーは丁度良かった。
乾いた涙を洗い流すのも、泣いて腫れた瞼を冷やすのにも。
真夜中のバスルームに響く水音を聞いていると、この世界に存在しているのは自分一人のような気がしてくる。
それくらい、生きているものの気配が感じられない。
実際は違うのだと分かっているけれど…。
大まかに水気を拭き取り、瞼の腫れを鏡で確かめる。
少し、収まったようだ。
厨房に篭りっきりとはいえ、れっきとした客商売なのだから、泣き腫らした顔で出勤なんか出来る筈がない。
深く息をついて、新しいシャツを羽織る。
「………………」
衿元に隠れるように付けられていた花片が、殆ど見えなくなっていた。
首筋だけではなく、胸元や脇腹も、絶える事が無かった筈の所有印が消えている。
ほろ。
涙がこぼれ落ちる。
瑠維は、ここ暫く二人と肌を重ねていなかった。
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