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同じ頃。
青海高度メディカルセンターの救命病棟医局。
机に突っ伏して寝ているのは、小鳥遊玲その人だ。
『せめて簡易ベッドで寝ろっつうの。
それにしても、この呑気な寝顔…ムカつく…』
眉間にシワが入った荊櫻の背中から、ドス黒い瘴気の渦が立ち上る。
明らかに殺気が混じっているのだが、昏々と眠っている玲には気付く由もない。
『ったく、世話の焼ける奴だ』
音もなく歩み寄り、手を差し出し…。
ぎりぃぃぃっ!!
渾身の力を篭めて掴んだのは、形の良い玲の耳。
しかも、更に力が篭められているのだ。
「……………………っ!!
いっ、痛ぇっ、いでででででっ!!
もげる!!
耳、もげるっつのっ!!」
「知るか、このド阿呆が」
ギリギリギリギリギリ…。
万力でも使っているかのような締め上げっぷりに、流石に玲の眠気も吹っ飛んだようだ。
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