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「はー……………。
マジでもげるかと思ったぜ…」
真っ赤になった耳を冷やしながら、玲は息をついた。
「知るか、この極楽とんぼが」
ゴリゴリ…ッ!!
「うおぉおおぅっ!!」
今度は両の拳でコメカミをグリグリされた。
「……………………っ!!
いっ、痛ぇっ、いでででででっ!!
頭に穴が開くうっ!!」
「やかましい。
私は今すこぶる機嫌が悪いんだ。
少し静かにしとけ」
ゴリゴリと減り込む拳に、玲は本気で殺されると思ったのだった。
「……………う、痛ぇ…」
ヒリヒリ痛む箇所を冷やしていると、鬼女のオーラを纏った荊櫻が二つの包みを机に置いた。
「朝メシと着替えだ。
とっとと食って一休みしろ。
溜まりまくった寝不足でミスでも起こされたら堪らん」
「どっかの軍隊の鬼軍曹かよ…」
「何か言ったか、あ"?」
今度は鉄拳をお見舞いされそうになり、慌てて離れる。
ほんの一瞬の差で、先程まで座っていた椅子がスクラップになっていた。
「死にたいならいつでも言え。
一瞬で引導を渡してやる」
絶対零度の一瞥を玲に向けた後、荊櫻は病棟へと歩いて行き…。
何が鬼夜叉の逆鱗に触れたのかが解らないまま、玲は床にへたりこんだ。
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