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「私は言った筈だ。
つまらない意地を張るな、家に帰って休めとな」
「意地なんか張って…」
「ないと言うのか、このクソ馬鹿があっ!!」
ガスッ!!
どおっ!!
「うぐぅっ!!」
頭一つ分背が低い華奢な体が放ったのは、見事としか言いようのない一本背負いだった。
床に転がされた玲。
異様な殺気を感じで飛びすさる。
ゴスッ!!
半瞬の差で、減り込む程の勢いの肘が床に入る。
「マジ……か…よ…?」
荊櫻が何故怒っているのか、殺気を向けられるのか解らないまま、玲は立て続けに繰り出される拳と蹴りを避け続ける。
ビシッ!!
空気を震わせて伸びてくる腕。
拳の軌跡に陽炎がゆらぐ。
「ちょ、ちょっと待って…、くれ…って…」
「知るか」
ガードに出した手を避け、高速で後ろに回られる。
ガッシ。
「んな………っ!?」
「隙ありだ」
後ろから回された細い腕。
胃の前で手が組まれる。
フワリ。
「………………っ??」
状況が掴めないまま、視界が回転した後…。
ズシャッ!!
上背のある玲の体が床に沈んだ。
総合格闘技でもお目にかかれない、見事な裏投げが決まった瞬間だった。
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