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油断をしていたら、確実に命が危ない。
いつも以上に速くて殺傷力がある攻めに、弓削は背筋が凍りそうな心境に陥っていた。
「どうしたの?
いつもと全然違うね、弓削さん。
ハンデ欲しくなった?」
獰猛なケモノのような瞳の璃音が、息ひとつ乱さずに笑う。
反対に、かわすだけの弓削は息が上がりかけていた。
「………ええ…。
今日の…今日の璃音さまは、どうかしています…。
いつもの手合わせとは…、全く違いますからね…。
………なんなんですか…?
私を本気で殺すおつもりだとでも…?」
「場合によってはそうなるかもね」
「貴方が怒ってらっしゃる理由を教えて下さらないのにですか?」
「わからない?
僕の言葉は弓削さんの耳に、全く届いてないんだね。
それならそれでいい。
僕は貴方が気が付くように全力でぶつかるだけだから」
ゆっくりと猫足立ちの態勢になり、微笑を浮かべる。
甘さが全て引き、最凶の暗殺者の如き冷たさになった璃音の表情…。
それは。
まさに母譲りの悪魔の顔だった…。
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