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想い、想われ、囚われる
両親や璃音たちが帰った後、瑠維は存分に腕を振るった。
二人がそれぞれ一番好きなメニューを作り、気持ち良く着れるよう服にアイロンを当てた。
瑠維の気持ちの篭った料理と着替え…。
それは、忍と玲にとって当たり前のものであり、完全に奪われて焦がれたものだった。
「ふぅ…。
やっぱり、瑠維のメシと服は最高だな」
「ああ。
味気ない食事も、瑠維の香りがしない着替えももう御免だ」
「あんまり褒めんなよ。
俺、真に受けて付け上がっちまうだろ?」
照れて頬を染める瑠維。
サラリと頬にかかる髪。
細められた目。
端がキュッと上がった唇。
やつれたことで少し細くなった首…。
それを目にした忍と玲は、ゴクリと生唾を飲んだ。
『な、何だよこいつ。
妙に色っぽくなって…。
畜生、なんか落ち着かねえじゃねっかよ』
『何だ…!?
いつもと違って艶っぽい…。
しかも、妙な儚さまで醸し出して…』
心臓が跳ねる。
呼吸が乱れて仕方ない。
思わぬ瑠維の変化に二人は戸惑うばかりだ。
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