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 ひと針ひと針、縫い目を揃えて仕上げた大輪の花。  ドレープの入った花びら。  藍や濃紺を使った陰影。  花を引き立たせる六花…。  糸の始末も決して手を抜かずに完成させた。 「………………ふぅ」  淡い青から深い紺まで、計算したかのように散りばめた色たち。  ほつれは無いか、仕上がりのおかしいところは無いかと確認し、隅々まで目を通す。  漸く四つめの季節が完成した。 「出来たのか?」 「うん」 「見せてくれるか?」 「………ん」  バサリと広げた布は、リビングを美しい青で彩る。  二人はその青い世界に魅入られ、ほぅと息をつく。  凍てつく季節の筈なのに、青い花たちと雪、煌めく星が彩る冬の世界は、瑠維の複雑な心を表したように甘く匂いたつようだ。 「すげぇ……………。  今までで一番の出来なんじゃねえか…?」 「本当だ。  花の一つ一つが香ってくるようだし、布で出来てるなんて思えない位だ」 「……………っ、………誉めすぎだって…。  そんな、大したもんじゃねーし…」  頬を染めて照れる瑠維は、楚々とした風情で二人の視線を離さない。  これだけの出来だから、きっと料理もかなりのものなのだろうと窺い知れた。  考えた料理が手の込んだもの程、瑠維のキルトの出来も良くなる。  果たして、思い付いた料理がどれだけ極上のものになるのかと思うと、瑠維が腕を振るうのが楽しみでならない二人なのだった。

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