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戀よ、永遠の愛となれ
支度部屋で狩衣(かりぎぬ)を身に纏った瑠維は、御簀(みす)の向こうに見える景色に見とれていた。
北国の春は遅い。
4月になってから、漸く花の蕾が綻ぶくらいだ。
水上本家の庭を彩るのも、梅、桃、桜…。
可愛らしく咲き誇る花々にほうと息をつき、逸る胸を押さえる。
式の作法はキッチリ頭の中に入っているが、ちゃんとできるのかと不安が過ぎる。
「瑠維。
心配しなくても大丈夫だよ。
多少手順を間違えたって、誰も叱ったり笑ったりしないから。
あの二人に任せちゃえばいいからね」
瑠維とは違う狩衣に身を包んだ璃音が、フワリと笑った。
「う…、うん」
璃音は気楽な話をするが、本当にそうなのかと不安な瑠維だ。
「大丈夫。
去年僕が結婚式した時なんか、龍嗣の指に指輪が嵌まらなかったじゃない?
でも、誰も笑ったり怒ったりしなかったよ。
だから、大丈夫。安心してよ。
花嫁のすること全部が許される日なんだし。
それにさ、お母さんと僕がいるのに、瑠維に対して何か言える訳ないでしょ?」
守り刀を瑠維の懐に入れ、ニッコリと笑う璃音。
そう言えば、母は一族最凶の女で、璃音はその鬼から手ほどきを受けている。
狼藉を働けば無事では済まないのだ。
迂闊に地雷は踏めないだろう。
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