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「瑠維、触れていい?」 「う、………うん」  ずっと高かった背丈は、いつの間にか璃音に抜かれてしまった。  ほんの少し見上げると、璃音の顔が近づいてくる。  こつん。  お互いの額が触れ、吐息が触れる。  額と鼻の頭を擦りつけるのは、幼い頃の璃音が甘える時にした仕種…。  元々瑠維の癖だったが、いつの間にか璃音も覚えてしまっていた…。 「…永遠の伴侶になれなかったけど、僕の大事な兄弟には変わりはないから…。  ずっと家族として愛してく。  だから…、瑠維の中にある古い恋は、僕が引き受けるね…?」  …………………チュ。  まるで誘われるように重なった唇。  璃音から初めてされた口づけは、瑠維の心をざわめかせることはもうない…。  既に、小さく萎んで枯れてしまった璃音への恋。  キシリと軋んで胸の奥から浮き上がり、瑠維の中から消える。 「………ん」  軽く瑠維が啄み、璃音が啄み返す。  穏やかな想いを互いに与えるだけの、狂おしさを伴わないキスだった。

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