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…ぴしゃん。
ひとん…。
バスルームから響く水音が、なんとなくいつもと違うような気がする。
どういう訳か、瑠維の肌や髪に当たるシャワーの音や、壁や床に落ちる雫の音に、体の芯が疼き始めたのだ。
「結婚式の夜は、伴侶が立てる音がなまめかしく感じるぞ」と、帰り際に氷室が言っていたのはこのことだったらしい。
瑠維の白磁の肌を滑る雫。
閉じられた瞼。
軽くついた吐息…。
何となく思い浮かべた姿が、どんどん色香を纏っていく。
「なぁ…」
「何だ、玲?」
「アイツが風呂に入ってる音って、いつもこんなエロい音だったかな…」
「………いや…。
俺も初めてそう感じてる。
今まで何気なく聞いていたんだが、どうにも…」
二人に抱かれ理性を飛ばした時の瑠維の顔が、凄絶な色香を纏ったときの姿態が脳裏にチラついてしかたない。
玲と忍だけに見せる、稚(いとけな)く、健気な瑠維。
式や会食の折りに見せた奥床しさ…。
それらがないまぜになり、二人の心の中を激しく掻き鳴らす。
「やべぇよ…。
頭が…、おかしくなりそうだ」
「言うな。
余計に想像しておかしくなる…っ」
何気ない水音の筈なのに、忍も玲も抑えが利かなくなりはじめていた。
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