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ほのかに木の香りがしている、真新しい体育館の中。高校に入学したばかりの生徒たちが、はやる気持ちを抑えられないというように、近くの人と話をしていた。マイクを持って司会進行をしている上級生は苦笑していたが、新入生の気持ちが分かっているためか、怒ることはなかった。
「では、次に演劇部、お願いします」
淡々と話す司会者の声のあと、ステージ上にゆっくりと上がる人物をみて、浅羽純は思わず、あっ、と声を上げた。周りの人は純にじろりと視線を向けるけれど、当の本人はステージ上の人物に釘付けで、その視線に気が付くことはなかった。
4月。新生活がはじまり、どことなく浮かれた雰囲気がただよう季節。純がこの春から通うことになった西第一高校では、新入生に向けて部活動紹介が行われていた。次々と紹介されるさまざまな部活動に、新入生の心は踊り、どこにする、あの先輩かっこよかったよね、なんて楽しそうな声があちらこちらから聞こえてくる。
純も普段だったら、友人と雑談をしながら入る部活を決めるのだが、高校に入学する前からどこの部活に入るのかを決めていたから、その必要はなかった。今日は静かに目的の人物が出てくるのを待って、やっと、その時が来た。
待ち望んだ姿に、心臓がドクドクと高鳴るのが分かる。
「演劇部部長の萩野真咲です。」
透き通った声が体育館に響く。うるさい空間の中でも、不思議と真咲の声はまっすぐ聞こえた。
スッと伸びた背筋。色白で線が細い体つき。ぱっちりとした綺麗な二つの目に、スッと通った鼻筋。薄めの唇は朱をひいたように赤くて、白い肌に映えていた。輪郭が丸いせいで、実年齢よりも幼く見える。
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