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見た目だけだと、静かにたたずむ、触れたら壊れてしまいそうな芸術品のような印象を抱くが、落ち着いてハキハキとものを話す姿はかっこよくて、真咲は芯が強い人間であることがうかがえる。純が彼を見るのは数ヶ月ぶりであるが、やはり目を引く人物であるなと、そう思った。
純が真咲をはじめて見たのは、昨年の12月。チラチラと踊るように雪が降る、ホワイトクリスマスの日だった。
その日は当時付き合っていた彼女と、デートをする約束をしていた。
昼は彼女が行きたいと言っていたクリスマス限定のホテルブッフェに行って、今話題の恋愛映画を見て、カフェで雑談をしながら時間をつぶして、暗くなったらイルミネーションを見て――なんていうプランを立てていたが、何が気に食わなかったのか、ブッフェを食べたあとに彼女に振られてしまった。
「純君って本当は私のこと好きじゃないでしょ」
人通りの多い街中を、他愛もない話をしながら2人で歩いていると、なんの前触れも無く、唐突にそう言われた。びっくりして彼女の方を見ると、彼女はボロボロと涙を流していた。
さっきまで楽しそうにしていたのに、なんでこうなってしまったか、純には分からなかったし、なんで振った彼女がそんなに悲しそうにするのか、理解が出来なかった。
「別にそんなことないけど」
訳がわからないと言う気持ちを抑えつつ、冷静に言うと、キッと鋭い視線が彼女から飛んでくる。
「そういうところだよ。もういいよ。別れよう。さよなら。」
「そう。分かった。楽しかった。ありがとう」
「最低!!」
穏便にすませようと、笑顔を浮かべて、物分かりのいい風に返事をすると、パンッっと乾いた音が街中に響いた。その後すぐにじわじわと頬が熱を帯びはじめて、ぶたれたのだと理解したけれど、その時にはすでに彼女の背中は小さくなっていた。
彼女の事はきちんと好きだったが、執着していたわけではなかったから、未練はなかった。同じ理由で振られるのも初めてではなかったから、ショックも薄かった。しかし、クリスマスだったから、周りはカップルばかりで、好奇な目でじろじろと見られて、いたたまれなくなった。「喧嘩?」「女の子可哀想」なんていうひそひそ声がそこかしこから聞こえる。
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