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 ぞろぞろと退場する人の波に乗ってホールを出ると、壁際に沿って、演劇部員が一列に並んでいた。 「ありがとうございました」と元気にお客さんを見送る中には、もちろん彼の姿もある。衣装は着たままであったが、情熱的だった舞台の上での彼とは打って変わって、そこでの彼はふわりと優しげな雰囲気をまとっていた。 笑顔で通り過ぎる人々にお礼を言う彼に、思わずドキドキとしてしまう。  「すごくよかったです」と純は胸の中でくすぶる思いをぶつけたかったけれど、なんだか気恥ずかしくて、結局はぺこりと頭を下げることしかできなかった。まるで初めて恋をした少女のような行動に、笑うしかなかった。  ふわふわと夢心地のまま、電車を乗り継いで家に帰る。行きも同じ電車に乗ったはずなのに、帰りの電車はなぜだかすごく楽しくて、無機質だった世界が色づいたように感じた。 家につくと、「デートはどうだったの?」と笑顔で聞いてくる母親に生返事をし、そそくさと自室へ向かった。そして貰ったパンフレットを食い入るように眺め、そこで彼の名前が萩野真咲であることを知ったし、戯曲を書いたのも彼だということを知った。あんなに記憶に残る物語を生み出せてるなんて、普段どのように世界を見ているのだろうと、彼の事がさらに気になった。  それからの純の行動は早くて、真っ先に真咲が通う西第一高校について調べた。純が今志望している高校よりも偏差値が高く、正直今のままでは落ちることが確定していた。それでもどうしても彼と同じ時間を過ごしたかったから、理由も言わず、志望校を変えた。  周りからは今からじゃ遅いよなんてさんざん言われて大反対をされたけれど、耳を貸さず、とにかく必死に勉強した。それだけ真咲と同じ高校に行きたかった。

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