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「琉生、鬱陶しい」 「純ちゃんが無視するからでしょっ」  背中にへばりつく琉生を追い払うようしながら身体を起こす。しぶしぶ離れて行く琉生に対して、そのままどこかに行っていくれないかと願ったが、彼はにこにこしながら空いていた純の前の席に座った。  涼しげな、切れ長の目と視線が合う。薄い唇にシャープな鼻と輪郭を持つ琉生は、パッと見た目はクールだったが、中身は全くと言っていいほど容姿と合っていなかった。  腐れ縁の遊川琉生とは、幼稚園時代からの付き合いである。琉生は出会った時から変わりなく、高校に入った今でも子どもっぽかった。よく言えば天真爛漫。悪く言えば能天気。成績は純よりも良く、頭はいいはずなのに、性格だけ見ると、ものすごく馬鹿っぽく見える。そのせいで昔いじめを受けていたこともあったが、本人は何も変わらなかった。  なぜ、いつまで経っても琉生は落ち着きというものを覚えないのだろうかと、彼の将来が心配になって、純はもう1回大きなため息をついた。 「純ちゃん、あまりため息ばかりつくと、幸せが逃げちゃうよ。笑って~!」 「誰のせいだと思ってるんだよ」 「え、誰。もしかして新生活始まるのが不安? やだ、純ちゃんかわいいところあるじゃん」  微塵も自分のせいだとは思っていないのだろう。神妙な顔つきをして真面目にそういう琉生に、そういうとこだぞ、と内心思ってしまう。 「アホ。違うわ。それより、なんでここにいるんだよ」  琉生のクラスは1組である。純が所属する6組は1組から一番遠いところにあり、用も無いのにわざわざやってくるような距離ではない。  何か用があったのではないかと思い当たり、聞いてみると、琉生はいきなり身を乗り出して、一段と声を大きくした。 「それね! 純ちゃん、今日の部活動見学一緒にいかない?」 「琉生は帰宅部じゃなかったか? 美月ちゃんと遊ぶ時間が少なくなるから部活嫌だって言ってただろ」

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