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君の園 待つ 4
「さぁーーっぶい!」
誰かがそう叫ぶ。
確かに…寒い。
暖かくなった、花がほころび始めた、なんてニュースで聞いていたが、実際はまだまだ冬が居座っているような状態で…
「で?花は?」
聞くと同僚が指差した。
おざなりも甚だしい程にぽつぽつと花が見えている。
「……」
「……」
「……」
互いに目を見合わせて気まずそうにしている同僚に向けて声を張り上げた。
「はい!てっしゅーーう!」
オレの声に、固まっていた同僚達が動き出す。
寒い中、決行!と言われなかったことに安堵した空気がひしひしと伝わってくる。
「誰だよ、花見しようって言ったの」
「下見は必要だよな」
「さみーっ早く片そうや」
終業間際に誰ともなく言い出した花見に、誰が責任を取れるわけもなく…
あっと言う間に片付け終わり、お疲れ様ですの声を掛け合って帰っていく。
「どっか飲みに行くか?」
肩を叩かれ誘われるも、いやと首を振った。
「帰るよ、飯食ってるか気になるし」
「あぁ?同居人?子供じゃないんだからさぁ」
いや、子供なんだよ。
って言葉は飲み込む。
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