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君の園 待つ 5

 幸成さんを初めて見掛けたのは、一年ほど前の営業帰り。  普段通らない道を歩いていた時だった。  ―――!  ほころぶそれに目を奪われて…店兼工房のガラス戸から覗き込んだ先に幸成さんが座っていた。  険しい顔で、背中を丸めて作業をする中年男のどこが気になったのか…なんて、今でも分からないけれど。 「ちょっと不器用な人でさ」  あれを作ったのがこの人だと知った時、素直に尊敬できた。 「ふぅん?」 「じゃ、また。お疲れ!」  気になって、  話しかけて、  最初は気難しい職人気質な人なんだと思っていたけれど、それは実はただの人見知りで…  近づいて、  触れて、  あんなにも細かい作業が出来るのに、実はお茶ひとつまともに淹れられない不器用な人だと知って…  押し掛けて、  傍に、いたくて…  作業に没頭すると食事も取らなくなるなんて、子供っぽいところも満更じゃなくて… 「さむ…」  ぼんやりと、まだ咲かない桜を見上げた。 「たーだいま」  声をかけるが返事がないのは常だ。  集中すると本当に周りをシャットアウトしちゃうんだから…  台所を覗くと、用意していった夕飯がそのまま寂しげに机に乗っていた。 「まーたか」  わざとドスドスと音を立てて工房を覗く。

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