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「ひっ」
「写真、折れちゃうよ」
白くて細長い指がオレが積み上げた中から一枚を取り上げて、端の折れを直す。
なんだろう、心臓がどくどくと音を立てて、全身に汗が噴き出すのは…
「…なぁ」
無条件に逃げなきゃと思うはずなのに、好奇心がそれに勝ってしまった。
「――どうして写真に写ってないんだ?」
ザワリと悪寒が背筋を駆けた。
相加は口元に微笑を浮かべたままで変化はないはずなのに…
写真部の小さな部室の空気が凍りついた気がした。
「だって、これ撮ったの俺だもん」
あはっと困ったように笑う顔は普通の雰囲気だ。
「写真部ってこう言う時悲惨だよね、行事日の写真が少ない。あ、でもこれは写ってるよ」
にっこりと笑う綺麗な二重の黒目に、今までとは違う意味でどきどきしながら、相加が示した写真を見たが――――…
そこに相加は写っていない
「………」
「これ良く撮れてるよね?」
同意を求められても、相加の綺麗な顔はこの写真のどこを探してもない。
それを写っていると言われても…
「………」
飲み込んだ唾液の音の大きさに相加が気づかないように祈りながら、「ああ」とだけ返して後ろに下がった。
「あの、写真もういいや、また明日探すか―――…ひっ」
「待って」
オレを囲うようにしてドアに伸ばされた手は、派手な音を立てていないはずなのにオレを怖がらせるには十分だった。
「見えてないね?――――写真の俺」
ここでうんと言ったらヤバい事になるのは分かりきってる。
口を開いたら悲鳴を上げてしまいそうなオレは、とりあえず小さく首を横に振った。
「 嘘つき」
チリッと、部室に射し込んだ夕日を受けて相加の目が赤い光を灯したように見えた瞬間、
逃げなきゃ
ただただそれだけで頭がいっぱいになった。
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