22 / 205

.

「――は……―ぅ…」  喉から呻き声が漏れる  走り続けたせいで喉がからからだった  隣を走っていたアイツに向かって手を伸ばしたが、指先は虚しく空を切る  ぞく…っとなって辺りを見回す  暗い森林公園  いつも寄り添って生きてきていた彼は、どこにもいなかった  ――――はぐれた?  思わず大声を出しそうになったのを、口を押さえて我慢する  ぴくん…と、黒い被毛を持つ耳が動いた  それに呼応するように、長い猫の尻尾が揺れる  アイツか?  か細い、掻き消えるような悲鳴 「――――」  はっと辺りに目をやり、登れそうな木の上へとよじ登った  木々の葉に隠れるように、息を殺す  その直後、興奮した人間達の声が聞こえてきた 「そっち逃げたぞ!」 「――ぁ!」 「よし!こっちだ!!」 「―――っ!――!!」  うるさい人間の言葉の間に、絞り出すような声が響く  ―――アイツだ!!  木上でその声にはっと息を詰める 「捕まえろ!!」  すぐ真下で一際大きな声が聞こえた瞬間、声にならない悲鳴と、どさりと土に倒れ込む音がした  あいつが、殴り倒されて地面に転がる 「っ!!」  飛び降りて助けようとした瞬間、仰向けに転がったあいつと目が合った  自分の黄色い瞳とは違う、青と金色のオッドアイがこちらを見てはっと開かれる  その目が、自分を木の上へと押し留めた  出てくるな  唇から血を流しながら、アイツはその事を視線で伝えた .

ともだちにシェアしよう!