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「そ、それは私のっ」 「先ほど拝借しましたよ」 「いつ!?」 「すれ違った時に」  しれっと言うと、携帯電話を持っていないはずの要さんは流暢な動きと説明を加えながら彼の携帯電話を操作してからメール送信画面を晒した。 「な、何を…」 「被害者の方の携帯にメールを送りました。こちらに持っているのは警察から自主的に拝借した被害者の携帯です」 「ちょ…京極さん!?」  慌てふためく刑事さんをよそに、いつものように笑みなのか馬鹿にしているのか分からない歪みを唇の端に乗せた。 「まだ届きませんね」 「…こ、こっちは……送信完了になっているが…」 「電波が悪いんじゃありませんか?」  刑事さんがバタバタと駆け寄ってメールの問い合わせをしているようだが被害女性の携帯電話は鳴る事はなかった。 「宛先を間違えたんじゃないのかね」  主人の言葉は、携帯電話に不慣れそうな年代の要さんに向けられたものだが… 「では、ちょうどいい。公務員君、確認したまえ」 「え…何を…」 「メールアドレスとやらだよ」 「あああ、はい……えっと…はい、ちゃんと名前は合っています。こちらですよね?」  刑事さんが主人に確認を取ると、彼もしぶしぶ頷く。

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