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「出てきたまえ。それとも。鼠のように引きずり出されなくてはならないのかね」
はっとその場にいた人々が息を飲んだのが分かった。
重厚な厚みのある鏡が、きぃと音を立てながらゆっくりとスライドしていく。
「 ご存じだったのね 」
鏡の隙間は30センチも開きはしなかったが、肖像画同様の痩せぎすの体なせいか何の苦も無くするりとそこから女性が滑り出てくる。
「お前っ」
ざっと彼が青ざめるには、それなりの理由があるんだろう。
「ふと、扉と扉の距離の割に狭い部屋があると思ったものでね。こちらにいる富阪君にこの屋敷の計測をしてもらったのだよ」
「え?いつ!?」
「事件直後からだが」
「一人で!?」
「公務員の君が一言手伝うと申し出てくれたら彼は徹夜する羽目には陥らなかっただろうね。公僕ならば奉仕したまえ」
「言ってもらわないとわかりませんって!」
昨夜いきなり、要さんに屋敷の長さを計れと言われた時には驚いたが…
「オペラ座の怪人ならぬオペラ座風洋館の怪女が、彼女を殺した犯人と言うわけなのだが」
涼しげな眼がちらりと青ざめた彼を見た。
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