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 恋人に去られて酒を飲んでくだを巻くと言うのは人間として当然だ!…と、言う最低な考えが罷り通ると酒に曇った頭は思 っていた。  けれど、散々オレに忠告してくれていた友人は「それ見た事か」とばかりに足取りのおぼつかないオレに愛想を尽かして放り出した。  握っていてくれた手が離れて、一瞬で掌が冷えた。  去っていく背は駆け足で、一時も早く遠ざかりたがっているように見えた。  でもオレは、それを薄情とは思わない。  それまでに、友人は男の恋人を作ったオレを気持ち悪がりもせず、オレの為に心を砕いて時間を割き、オレに恨まれると分かっていながらも悪役を買って出てくれていたのだ。  ――――騙されているから  ――――違う奴とホテルから出てきた  ――――何股もしている  ――――いいように使われているだけ  ――――殴る奴は最低だ  恋は盲目 とよく言ったもので、オレはそれを痣だらけの顔で嘘だと笑い飛ばした。  貯金が底を突いた辺りから暴力は激しくなり、姿を見かけなくなった。  それでもあいつを待つオレに、友人は切々と説き伏せてくれていたのに…  無視して、なじり、遠ざけようとしたのはオレ自身だ。  だから、ずっと傍に居てオレの為にと助言してくれた友人が傍らからいなくなったのは…  ………当然で  去って行く背中に声を掛けれないまま見送り、呆然とした。  これが、オレが運命の恋だと言い張って押し通そうとした恋愛の結果だ。 「   独り、だ 」  ちらりと視界を覆う水の膜に白い物が映り込んだ。  見上げた明るい夜空から降り出した雪は、雨より も柔らかにオレの心を押しつぶそうとしているかのようで、冷たい風に押されるようにして一歩歩き出した。

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