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 冷える冷えると思っていたけれど、まさかこんな日に降らなくてもよかっただろうに…  例年よりも少し早いのではないかと思えるその雪は、あっと言う間に闇に沈む木々を仄明るく染め上げ始めた。  当然の事なのに、歩いた後にできた薄い足跡が面白く思え、ふらりふらりと蛇行を繰り返す。  それも、あっと言う間に覆い尽くされていくのだろうけれど…  風に促されて入った先は海浜公園だった。  海風から町を守る為に植えられた木々が生い茂り、どこか薄暗く雰囲気は重い。 「  小さい頃、遊んだな」  友人とは古くからの付き合いで、 小さな頃は泥だらけになってこの公園で遊んでいた。  木の鬱蒼としたこんな所だが、昔はもう少し木の間隔が開いていて、手入れもまめにされていたから子供でも来やすかったのだ。 「――――――っ」  びゅうぅっと一際強く吹いた風に思わずよろけた。 「…なんで、あいつとの思い出ばかり思い出すのかなぁ」  恋人の顔を思い出そうとしても、吹く風に消えてしまうくらいの記憶しかない。  あんなに真っ直ぐに見ていたはずなのに…  いつの間にか、殴られる事が怖くて、  いつの間にか、別れ話をされるのが怖くて、  傍に居てもずっと俯いていたように思える。  夕方に、罵りながらオレを捨てた恋人の思い出よりも、昔、友人と遊んだ記憶の方が鮮明だった。

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