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 コンクリで出来た大きな滑り台を逆走して、ブランコではどちらが高くまで漕げるか競争をした。  一日中駆けずり回って、喧嘩もして、仲直りもした。 「――――これ」  そんな公園の外れに、子供達を見守るためとでも言いたそうに設置された銅像がある。  蹲るような体勢で外套を広げた、男の像だ。  外套の部分がちょっとした空間になっていて、そこに入ろうと幾度もよじ登って、落ちかけた記憶がある。  ――――コレ、 「これ、……なんだっけ」  銅像の伸ばされた手にぶら下がる幼い友人は、舌足らずな口調で何と言っていたのか… 「………」  細かい部分を思い出そうとする度にアルコールが脳の奥を揺さぶる。  思い 出そうとしたことが思い出せずに、苛々としながら気だるい体を銅像の傍に下ろした。  背を預けて、単調に続く雪の降り積もる様を視界から追い出すために目を閉じる。 「あ、卒業制作…」  未だ形を取らない粘土の塊を思い出して呻いた。  大学の単位はなんとか足りているが、卒業制作の作品を出さなければ留年確定だ。  恋人が望むものを与えるために、制作そっちのけでバイトに明け暮れていたツケが回って来たのだけれど…  泣きっ面に蜂とはよく言ったものだ。  もう、どうしていいのか分からない。  散々泣いて、もう泣くのは疲れた。  だからと言って、相手の顔色を窺ってご機嫌を取るのもうんざりだ。  殴られると怖がるのも、  捨てられる と怯えるのも、  もう、十分だ。  今なら、馬鹿だったのだろうと思える。  学科は違ったけれど友人と共に芸術大学に入学して、そこで煌めくような才能を持つあいつに出会って…  男にしか興味を持てなくて悩んでいたオレにさっと手を差し伸べてくれて… 「………」  そろりと開いた視界の端に、銅像の手が見えた。

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