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ここはカビ臭くて、好きになれない。
埃っぽくて、鼻がむずむずする。
でも、しょーがねぇ…
積んであるマットに腰を下ろす。
他の体育用具は砂埃を被っていたが、それだけは掃かれたように綺麗だ。
普段、オレが使っているから…
いや。
オレだけじゃ…ねぇな。
「おせぇよ」
上着を脱いだ時、倉庫を開ける音がした。
薄暗い倉庫内に一条の明かりを差し入れたそいつにそう声を掛けた。
「俺は、お前みたいに暇じゃないんだ」
凛とした声…
凛とした…姿…
逆光でも、そいつが真面目くさった顔をしているのがわかる。
いつもそうだから。
そいつは隙がない。
「オレだって、そうだよ」
いや、オレは暇だ。
オレとあいつは正反対なんだから…
「そうか、じゃあ俺は戻るとしようか」
「いやっ待てっ!」
情けなくその制服の袖を掴むと、あいつはマットに座るオレを見下ろしてクスッと笑いやがった。
「…っもしろくねぇ」
その笑顔が……ムカつく。
ムカつくのに………
「舌、出して」
簡潔なあいつの言葉に逆らえなくて、オレは舌を出した。
小さく笑いながらこちらを見下ろすあいつに向けて、精一杯に伸ばした舌の表面をあいつの舌がぺろりと舐める。
「ぅ…」
ざわざわっとするのは、嫌悪じゃなくて…快感。
ざらりとした感触に腰が跳ねる。
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