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 休みの日に、教師と生徒が個人的に会うのはまずいんじゃないかと言う思いもあったが、オレはいそいそと朝5時に起き出して準備をしていた。  昨日天気が崩れたが、大丈夫だろうか?  服はこれでよかっただろうか?  北に行くのに薄着でいいのか?  念の為に一枚薄手の上着を持って行った方がいいのか?  荷物は?  鞄は?  誘われたのだから、今からでも手製の弁当でも拵えた方がいいのか?  いや、でも、作ったとしてもせいぜい塩にぎりしか作れない。しかも丸型。  …それならない方がいいか?  いや、気持ちの問題だ。  誠意が大事って言うしな!腹壊しても、日野ならなんか許してくれそうだし。  あ、でもコメはどうやって炊くんだ? 「うるっさいっっ!」  廊下でうろうろしながら考えていたせいか、ドアから顔をのぞかせた姉にバンッとクッションを投げつけられた。 「いてっ!」 「安眠妨害っ!」 「知らねぇよっ!」  その後、尚もうろうろしていたオレは家から蹴り出され、約束の時間から1時間も早く待ち合わせの場所に着く羽目になった。 「…かっこわりぃ…」  呻いて、腰を下ろしていた花壇の片隅で頭を抱える。  これじゃ行く気満々じゃないか!?  いや、行く気満々なんだけどっ!!  でもモロすぎてかっこ悪……… 「へ?」  一人のたうちながら顔を上げたオレと、きょとんとした日野の目が合ったのはそんな時。 「あ、おはよう」  私服になるとますます童顔が際立つ。  柔らかい笑みに、ついオレの顔も緩んだ。 「な、な、なんで!?」  時間を間違えたかと携帯電話を確認しても、時間は間違えてはいなかった。 「うん?なんか、楽しみで…早く出てきちゃったよ」  照れたように笑う日野の笑顔にぎゅっと胸が締め付けられ、オレは何も言えないまま頷いた。  笑顔が、嬉しくて…  例えそれが生徒に向けるものだとしても、オレはそれだけで幸せになれてしまうんだと、…日野は分かってるんだろうか? 「岡田も早かったね」 「っ…オレは……オレは」  素直に「楽しみだった」と告げていいものか戸惑う。  今の日野に、  『小竹祝』に、  …オレの気持ちを告げるのは……  どうなんだろうか…? 「…退屈だったから……」 「だよな。じゃないと行こうとは思わないよな」  ちょっと寂しげに見えたのは、気のせいか? 「いこっか」  そう促されて、白い軽自動車へと乗り込んだ。

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