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男同士の恋愛が認められてきたとはいえ、マイノリティには違いない。
実際に、嫌悪に感じる人間だっている。
日野がそうとも限らない。
好きだと告げて、日野に避けられたらと思うと踏み切れなかった。
このままなら、手のかかる問題の多い生徒として傍に居る事が出来、なんだかんだとこじつけて周りをちょろちょろすることだって可能だ。
それすらも出来なくなったら…?
1800年の気持ちを抱えて嫌われたら……ぞっとする、どころではない。
「ん…そのうち…」
歯切れ悪く答えるオレに怪訝な顔をして見せた日野は、「もうすぐだよ」と嬉しそうに告げた。
土手に連なる木を見上げる背中の寂しげな雰囲気に、なんと声を掛けていいか戸惑う。
ここまで落ち込まれると、なんと言っていいのか…
「日野ちゃん…」
昨日、雨が降った。
もしかしたら、と思わないわけではなかったが、桜は案の定散ってしまっていた。
暗褐色のガクだけを残し、寂寥感を漂わせた桜の木々達を見やって溜息が出た。
「残念…だったな」
見上げる横顔は、どこか遠くを見ていて…
オレはそれ以上のいい言葉を思いつかずに傍らに立つしかできなかった。
「…うん」
眉を下げたその顔に笑顔を灯したくて、思わず手を取った。
「へ?どうした?」
びっくりしている日野の手を引いて歩き出す。
「どっかに、花が残ってるかもしれねぇだろ?」
「いや、でも…」
話が出た時点で遅いくらいだった。
雨と言う追い打ちをかけられた桜が残っている可能性はほとんどなくて…
でも、一輪でも残っていれば、笑ってくれる。
日野がそう言う奴だって知ってるから…
オレが手を掴んだまま、二人で土手沿いを歩いて行く。
季節外れなそこはオレ達以外の人気はなくて、そのせいか日野も手を振り払おうとはしなかった。
どきどき…と、指先が脈打つ。
それが歩いているからか、どさくさに紛れて手を掴んでしまった事による緊張からなのか分からなかった。
「……」
「……」
首が痛くなるほど見上げても、残念ながら桜はどこにもなかった。
土手の端、桜の途切れる場所まで来て二人して項垂れる。
「仕方ない…か」
オレがそう言った時、「あーーーー!」と傍らの日野が声を上げた。
「な、な、なに!?」
驚いて離してしまった手を、今度は日野が握り締めてくる。
「えっちょっっ!!」
「見て見て!」
日野が指差した先は、川。
「んだよ?」
つられて覗き込む。
オレには、適度に汚れた川にしか見えない。
「桜」
幸せそうに言う日野に手を引かれ、今来た道をゆっくりと歩き出す。
日野の視線を辿って川を見詰める。
「桜、あったな」
桜そっちのけで、ふふ…と笑う日野に見惚れる。
嬉しそうに笑う日野の笑顔は本当に幸せそうで…大好きだ。
「これも十分花見だよな?」
同意を求める日野に頷く。
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