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「岡田はどうなんだ?」 「え?何が?」 「お前も、片思いって…言ってただろ?」  ああ、なんかそんな事も言ったっけな…  でも、まぁ…それは… 「失恋したから…」  そう言うと、日野ははっと目を見開き、そわそわと落ち着かなげに視線を彷徨わせてコーヒーを一口啜った。 「そか…すまん」 「なんで謝るんだよ」  あ、そっか。  失恋の原因になったんだもんな…  うん。  謝っとけ!!  謝れ!平伏せ!  オレはお前が……生まれる前から好きなんだぞ! 「いや、傷ついてるのかなぁって…」 「ぅ…そりゃ……」  傷つかないわけがない。  なんてったって一度死んだのに想い続けてるんだから。  筋金入りだ。  だからこそ、失うのも怖いし…  お前の幸せを思うなら、諦める事も出来る。  困らせたいから生まれ変わったんじゃない。  我儘を言って、この想いを受け入れろと迫るために、もう一度巡り合ったんじゃない。  ただ傍に居たかったから…  もう見る事が出来ないと、絶望をオレに与えたあの笑顔にもう一度会いたかったから…  もう一度、その温もりに触れたかったから、オレは長い時を渡った。  時代を渡って、出会いたかったんだ。 「また、どこかに行くか?」 「へ?」  微かに赤らんだ鼻先を掻きながら、日野は困ったように笑った。 「岡田が元気ないのも、変な感じがするし…気分転換にドライブでも連れてってやろうか?」 「え…」  え…と、敵に塩…じゃなかった。  傷口に塩ってこう言う事を言うのか?  そんな顔して、そんな事言われたら…同情ってわかってても……勘違いするぞ? 「行く!行く!」  あれ?  傷口に塩を塗られた気分じゃなかったっけ、オレ。  なんで二つ返事で答えて、メチャクチャ嬉しい気分になってんだよ… 「じゃあ、決まりだな!」  満面の笑みは魅力的で…  やっぱり、もう少しだけ……諦めるのを延ばそうかな…

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