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 輪廻転生のからくりを調べれば調べるほど、本当にこう言った事例の少ないことが分かる。  ましてや、歴史的に立証された例となると…多くない。  オレが覚えているからと言って、オレが分かったからと言って…  きっと彼は、オレの事なんか……覚えちゃいない。  覚えられてなんか…  いない。  式がどうのなんて、すっかり頭から抜け落ちて、ぐるぐる回るこの考えと飛びつきたい衝動を抑える為に裏庭に向かった。  少し散歩すれば…頭も冷えるかもしれない。  満開にはまだ少し早い寂しげな桜を見ながら歩く。  昔、『天野祝』と忙しい職の合間を縫って見に出かけた事を思い出して、余計に頭の中はぐるぐるし始めた。  二人、手を繋いで行った。  オレの手は汗ばんで…それを彼に知られたくなくて振り払って走り出したりしてたな… 「あ。誰だ…ゴミ捨てたの…」  ゴミを見つけて俯いた拍子にぽとん…と涙が落ちた。  もう大人なのに恥ずかしくて、拾う動作に誤魔化して拭った。 「………会えた…」  もっと出そうになった涙を堪える為に鼻を啜る。 「あ…の……」 「え?」  泣いているところを見られた!?    ちょっとそれは恥ずかしいぞ?  ここは一つ、新任とは言えイゲンと言うものを見せておかないと…………  あ。 「新入生だよね?どうしたの?」 「あ、えと…」  思わず、手の中のジューズのパックを握る手に力を込めた。  黒髪に、やんちゃそうな黒い目、その顔立ちも何もかも、1800年前と同じ…なんて訳にはいかないのだけれど、それでもどこかで『天野祝』の面影を見た気がした。  何故彼が?  どうして?  もしや、と、思わないでもなかったけれど、彼は不安そうな声で呟いた。 「その…道に、迷って…」  この学校は山の麓にあって、増改築を繰り返されたせいか少しややこしい。何度か来た事のあるオレでも未だにわからない場所に出る事もあるので、彼ならば尚更なんだと思う。  彼が、いる。  目の前に、いる。  …どうしよう。  ………抱きしめたい。  でもそんな事をしたらオレは間違いなく変態だ。  教師が生徒に…まして、同性に抱きつくなんて…きっと彼は嫌がるだろう。 「そう、僕もいまいちよくわかってないけど、たぶん校門は向こうだよ」  頭の中はさっきよりもぐるぐるしていて、イゲンを保てそうな事を言えたかどうだか定かじゃない。  でも、彼はオレの言葉にほっとしてくれたようで… 「…っ……」  ぽろぽろ…って涙が出てきた時、改めて彼が『天野祝』だと確信した。  小さい頃、君はよく泣くのを堪えきれずに泣いていた。  直立不動で、両拳をぎゅっと固めて…  引き結んだ口と、閉じないように目に力を入れて…  『天野祝』…君は変わってないね。

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