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うら寂しさを感じながらプリントを出して岡田に解くように言いつける。
ややして聞こえてきた、からりん…からりん…と鉛筆を転がす音にブチ切れそうになる…のを堪えた。
そんなに、オレの科目は嫌かっ!?
科学教師になった一環に、岡田だって絡んでるんだからちょっとは誠意を見せてくれ!
鉛筆サイコロを覗き込もうとした岡田の襟をぐいっと引っ張る。
「あだっ!!」
「そんな鉛筆サイコロで答えたって、補習にならないだろ!」
「だって…わかんねぇし…」
おかしいな、あれだけしっかり説明したはずなんだけどな!?
溜息が漏れるよ…まったく。
「ちゃんとしないと、入学式の日のことバラすぞ!」
「っ!?なんだよ、その脅し文句…」
ああ。恥ずかしがってる恥ずかしがってる。
迷子になったくらいで泣き出すなんて、可愛い…なんて思っちゃうと失礼かな?
昔は同い年だったけど、今は10才近く離れてるんだから、可愛らしく見えて当然かもしれない。
「…いいよ…ちゃんとするよ」
「よろしい」
むくれて、つんと突き出された唇が…魅力的すぎる。
「………わっけわかんねぇ」
キスさせてくれ…なんて、言えないよな。
10才離れて可愛らしく思えるのは新鮮でいいけれど…それは10才も離れていると言う事に他ならない。
年上すぎだ。
いや、年なんかなくても、男からいきなりそんな事言われたら………引くな。
女なら、喜んだのかな?
なんで、今回も男同士なんだろ…?
遺伝子を恨んでやる。
「授業をちゃんと聞いてなかっただろう?」
オレの授業は、つまんないのかな?
「これは…」
覗き込んで問題を見ていると、岡田が首を傾げた拍子に風に靡いた髪がオレの肌に微かに擦れた。
うわっ…
うわぁ…どうしよう…
……まずい…勃つ。
「ほら、後は自分で考えなさい」
そう言って離れるしか、オレにはできなかった。
これ以上傍に居たりなんかしたら、誤魔化せないくらいになるのは間違いないっ!
急いで離れると不自然だから、できるだけ平静を装って窓辺に近づき、頭を冷静に戻すために外を眺めた。
「…んだよ、最後まで教えてくれればいいじゃねぇか」
彼の、呟きに胸が痛んだ。
傍らに居たいけど…オレは昔から君を恋愛対象としてしか見れない。
君に発情する姿を見られて…気持ち悪い、なんて…言われたくないんだ。
「自分の力で解かないとだめだよ」
そう言うと、彼は観念して問題を解き始めた。
真剣に取り組む横顔は昔と変わらない。
昔も、オレは書簡を書くふりをして、こうしていつも彼を盗み見ていたっけ…
心が、鈍い痛みを上げたのを無視して視線を逸らした。
昔…昔の事…
前世なんて、どうして覚えていたんだろう。
覚えていなければ、彼を見てこんなに思い悩むことはなかった。
オレの後を追って自害した彼の姿を思い出して、悪寒と震えが止まらなくなることもない。
オレの親友…
オレの想い人…
『天野祝』はオレの事を…どう思っていたんだろう。
嫌われては…なかったはずだ。
嫌いな人間の後を追って死ぬ奴なんかいな………いや、でも、もし、実は、あの世に追いかけてまでも憎く思われてたりしたらどうしよう…?
もしかして好かれてた…なんて言う可能性より、そっちの方が高い気がしないでもない。
あ…落ち込んできた…
いやいや、そもそも、オレが記憶があるのが悪いんじゃなくて、岡田に記憶がないのが悪い!
うん。
岡田が悪い。
…岡田には…本当に記憶がないのかな?
ぐるぐる考えて、聞くのが一番早い!…と思ったけれど、昔に言われた弟の言葉が耳の奥に蘇った。
『変な事』
彼に聞こう!と言う意気込みが一瞬で萎むのが分かった。
散々調べて、見てきたはずなのに…
前世を知っていると言う人間を、周りがどんな目で見たか…
どんなふうに思われたか…
彼に気持ち悪いと…避けられたくなかった。
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