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 花壇の隅で蹲る岡田にぽかんとした。  早くないか?  オレが遅かった?  え!?  …だって…まだまだ、まだまだ待ち合わせの時間には遠いよ?  オレみたいに、ドキドキして朝早くに目が覚めちゃって、どうしようもこうしようもなく飛び出してきてしまったのならいざ知らず…  もしかして、楽しみに…してくれてるのかな? 「…かっこわりぃ…」  え。  オレ、そうなの?  改めて自身を見下ろしてみるが、無難なシャツにジャケットに…と言った格好で。  趣味悪いのかな…  岡田は10代だし、そこから見たらダサいのかもしれない。  ああああああ…なんでオレは衛人の服を借りてこなかったんだ!  現役大学生のあいつの服なら、おじさんぽいと言う事は避けられたのに!!  一人葛藤していたオレと岡田の目が合ったのはそんな時。  お互いにぽかん…と見つめあった。  岡田も楽しみにしてくれていたのかな?と思うと、ちょっと胸がときめいて微かな期待が頭をもたげる……のだけれど、それも岡田の「…退屈だったから……」の一言に打ちのめされて…  ま、そんなもんだよな…  あんまり、期待するなよ…と自分に言い聞かせながら愛車へと乗り込んだ。  道に迷うなんて格好の悪いところを見せたくなくて、入念に下調べはしておいた。  車の中では弾むとは言えないが、会話が途切れる事はない。  …途切れる事はない…が、岡田の視線は携帯電話に落とされたままだ。時折思い出したかのようにカチカチと何かを操作する。  誰かとメールか?  ……学校じゃ、そんな素振りもないけど、もしかしたら彼女なのか?  やんちゃそうな顔立ちだけど…岡田ならもてそう…  やっぱり、オレなんかの出る幕はないのだと思うと悲しくなってきた。  いや…と思い直す。  むしろはっきり彼女がいると分かった方がオレ自身にも諦めがつく。 「彼女?」  会話の跡切れからだったから、少し驚かせたようだった。飛び上がってこちらをぎょっとした顔で見てくる。 「え!?」  図星!?図星だった!? 「ほったらかしにして、怒られてるんじゃないのか?」  ずき…と胸が痛む。  突っ伏して泣き出したいのを、運転中だと言い聞かせてぐっとこらえる。 「彼女なんかいねぇよ」  ぶっきらぼうなその言い方は逆に肯定しているようなもので…  なんだかやけくそな気持ちで話を続けるしかできない。  モテるモテない話になり、逆に聞かれた。 「日野ちゃんはどうなの?」  オレ…モテたためしがないな…  元々、君一直線だったせいか他に気が行く事もなかったし…  なんだかんだとまとわりついてくる衛人とつるむことの方が多いし…  ヤバい…オレ、このままだと魔法使いになっちゃいそうだよ…  

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